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“少女☆歌劇 レヴュースタァライト”









 少し前の作品だけど、見てみたらおもしろかった。
 由緒ある演劇学校で「トップスタァ」を目指す生徒たちが、密かに謎めいた決闘を繰り広げる物語。
 雰囲気としてウテナ/イクニっぽさがある。監督の古川知宏は『輪るピングドラム』『ユリ熊嵐』にも参加していて、幾原邦彦からの影響について自分でも語っている。*1
 全12話。中盤の7話にひとつの衝撃を設けつつ、全体としては主人公ふたりを中心にきれいに物語がまとまる。


 重層性

 この作品の特徴は、重層するメタ的構造。

1. 「物語」と「物語内物語」
 作品世界での古典戯曲「スタァライト」。年に一度のその上演が生徒たちの憧れであり、作中に設定されるゴール。
 物語の展開は途中から、「転落と幽閉」というこの戯曲の展開をなぞるようになる。
 人生を模倣するものが物語なのだとして、ここには、物語を再度模倣した人生、という転置がある。
 トップスタァを夢見ることの罪、きらめきの喪失。
 結局のところそれは夢を目指すことに伴う挫折と回復の物語。作中で出てくる「再生産」っていう言葉が、そのあたりも含みながらメタ構造も示唆するキータームになっている。

2. 「視聴者」と「物語内の観客」
 謎のキャラクターであるキリンの正体が、アニメを鑑賞しその展開を欲する視聴者の象徴だったというのはなかなか良かった。こちらに問いかけられるシーン、『MOTHER2』のラストバトルぐらいの感じがあった。「演劇」「メタ」っていう全体の志向がつくづく徹底してる。

舞台とは 演じる者と観る者が揃って成り立つ
演者が立ち 観客が望むかぎり 続くのです
そう あなたが彼女たちを見守り続けてきたように


3. 重なり合う舞台演出
 地下劇場でのレビューオーディション。
 ここでの「バトルフィールド」が、誇張した舞台美術・舞台効果で彩られるのがおもしろい。書き割りが展開したり、スモークでの爆発効果が発せられたり。
 作品内舞台上での半3Dみたいな演出が、2Dアニメ作品での演出ともなっている重層性。




 その他

  • 大場ななが実はラスボスの器、っていうツイストは良かった。
    タイムリープが物語全体の骨格にあると見せて、でもそれはやはり主人公ふたりの軸を引き立てるための設定で。
    でももうだいじょうぶ わたしが全部 受け止めてあげるから!
    悲しみ、別れ、挫折
    舞台少女を苦しめるすべてのものから
    わたしの再演で 守ってあげる!
    この台詞とか、まどマギ的救済のダークサイドみたいな感じもある。
    で、この「負のタイムリープ」のようなものを打開する闖入者としてひかりが位置付けられると。
    再演を変えたのはひかりではなく華恋、ってななが言ってるけど、ロンドンでのレビューオーディションからの流れだと、軌道変更の直接的な要因はやっぱりひかりの方だと思う。
     
  • 8話はバトルもかなりすごかった。これはロンドンでの劇をなぞった内容にもなっていて、ロンドンではきらめきを失っていたひかりが、ななとのバトルでは切迫性を取り戻している。
     
  • 4話。電話で会話の断片が交互に描写されるところが演出として良かった。


 

*1: 
古川知宏(監督)×樋口達人(シリーズ構成)×中村彼方(作詞家)TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」放送打ち上げロングインタビュー(後編)
https://akiba-souken.com/article/37334/






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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもうループを背負ってない”
―Angela Mitchell