“センコロール 2 Cencoroll 2”
監督/脚本/作画 : 宇木敦哉
2019
監督/脚本/作画を宇木敦哉ひとりでおこなった2009年のアニメ『センコロール』の続編。
今回も主要部分は宇木敦哉だけで制作しているが、上映時間は30分から75分へと大きく伸びている。登場人物も増え、物語としても若干アクティブなものになった。
2014年に一度センコロール2公開の発表があったのだけど、結局延期、それからしばらく情報が途絶え、ようやくこのほど公開に至ったということからも、個人制作の労苦がうかがえる。もう制作中止かな…とも思ってたので、ちゃんと完成させたのはすばらしい。
1と2を併せて『センコロール・コネクト』として6月29日から上映中。
このシリーズの特徴は、「ゆるさ」と「動き」。
物語は〈ドローン〉と呼ばれる超自然的な存在を中心にめぐるのだが、作品全体には、何とも言えない独特のゆるさがずっと漂っている。
この雰囲気は、基本的には主人公テツの淡泊で動じない性格によるもの。もうひとりの主人公ユキはテツよりもずっと行動的で楽観的。とはいえ熱いわけでもなく、テツとの組み合わせだとまったり感が強調される。
一方で、奇妙なクリーチャーたちが繰り広げる超常的なバトルの「動」の側面がある。ぬるぬる動き飛び回る不可思議な形体、その動画の激しさ。ここには単純に、視覚的な新鮮さと快感とがある。
この緩/急という相反する方向性があって、それが作品内に共存しているのが大きな特徴。
ただしこれ、必ずしもパーフェクトなバランスで編み合わさってはいない。
強力なクリーチャーとそれを駆使するキャラクターが邂逅して、バトルが始まり思いっきり激しく展開していきそう、BGMも盛り上がってきたし……ってなったら何か急にBGMも止んで穏和な雰囲気に引き戻されて、っていう流れがけっこうあって、ふたつの方向性が衝突し合っている感じがないこともない。1もそうだったけど2でもやはりそういう傾向。
そして困ったことに、両方にそれぞれ魅力がある。配分の問題というか、もっと緩急をはっきりさせた方がよいような……。
でもやっぱりこの「ゆるさ」というのが重要で、ふつうだったら熱闘に移行しきってしまうところ、むしろそれを押し止めようとしてこうなってる気もする。単なる激しいバトルものにして終わらせたくない、っていう意志が見えるような。
ゆるさを生む大きな要因は明らかにテツのキャラクターなのだが、達観や諦観っていうわけでもないし、超絶的な力を持つことの自信の裏返し、ってわけでもないし……。ただ乾いてる、っていう感じがある。変えようのない監督の人生観の表れなのか。
ハリウッド的文法のような定型に絶対に沿わなければおもしろい映画にならない、なんてことはないし、そういう意味でこの作品は王道からだいぶ逸れてるとは思うけど、代わりに、独特の感覚が満ちている。
で、まあとにかく「動き」がとても良い。
1もそうだったけど2はさらに。特に最初の海岸のところ。
あと、1もそうだったけど2でも、クリーチャーの口の中に飲み込まれていく(乗る)ところがすごく気持ちよさがある。
全体的に「動き」を満喫できるアニメだと思う。
さらに続編ありそうな終わり方。というか、『センコロール3』の制作決定が公開初日舞台挨拶で既に発表されている。