監督・あおきえい、脚本・舞城王太郎。
設定や話が少し難しくて若干取っつきづらいけど、おもしろかった。
いきなり超現実的世界に放り込まれている主人公が超現実的な殺人事件を解くはめになっている──というところから始まる。わけわからないまま見始めると、次第にそれが現実世界の犯罪捜査の一環としておこなわれるシミュレーションか何かであるとわかり、そうやって単発で起こる殺人事件を解決していく話の集積なのかな、と思わせる。
事件の背後にジョン・ウォーカーという怪しい存在を見え隠れさせながら、イド内部の鳴瓢、現実世界の〈井戸端〉、外務分析官という異なる場面が同時並行的に進む展開。
物語を導く主軸は次の三つ。
- イド
- 殺意の残留物から、殺人者の無意識を具現化した仮想世界へ没入する。テクノロジーっぽい見かけが施されているけど、要は夢の中に潜るということ。『インセプション』っぽい雰囲気もある。
そこでは「カエルちゃん」という人物が毎回殺害されており、没入者は「名探偵」としてその犯人を探し出すことが課せられる。この過程を通じて現実世界での殺人事件の手がかりがわかるという筋道。 - ジョン・ウォーカー
- 別々に起きているように見える殺人事件に共通して、殺意を煽動するような謎の存在が関わっていることがわかる。この存在が殺人犯たちを生み出している。
- 鳴瓢
- かつて刑事だった主人公を今の境遇──「殺人犯」という境遇に落とした要因には、妻と娘の非業の死が絡んでいるらしい。
……イドの設定に慣れない序盤では複雑で難しい話だと感じていたけど、これらの軸につながる根底に飛鳥井木記という人物がいるということがわかったあたりから、全体像がクリアに見えてくる。
〈ミズハノメ〉は単に謎ガジェットというだけでなく、苦難を背負った特定キャラクターの上に成り立ったものであり、彼女の固有の物語を伴っている。(これは、同様に夢に潜るタイプの物語である『インセプション』と大きく違うところ)
最終的に物語は、「飛鳥井木記を救う」ということへ収斂していく。
これは「名探偵がカエルちゃんの死の謎を解く」という構図に重なっていて、意味もわからず物語最初からおこなわれていたことだったわけだけど、ようやくそれが「何度も殺害が繰り返される飛鳥井木記をその業から解放する」という現実世界での目的につながるものだったのだとわかる。そのあたりをすべて詰め込んでひとつの絵にしたのが飛鳥井木記による未来視的な予感のところで、あれはきれいな場面だった。
続編つくれそうな終わり方だったけど、このまま終わっても充分。本堂町と富久田の関係も含め、前半の抑圧的で重い雰囲気と対比して後半での感情喚起の配分具合がとてもよい。
その他のメモ
- 3人の名探偵たち。殺人犯だけが「名探偵」になれるというのは、諧謔がある。
- イドのなかのイド、夢のなかの夢。どっちが現実(夢)なのかが逆転するかも……っていうのはこの種の設定でよくあるけど、この作品の場合、イドの中で家族と過ごした時間の描写が説得力あって、特に切実に感じられた。
10話は全体的に演出が良くて、電話のところは特に泣けた。(10話がすごいアニメは良いアニメ。eg. まどマギ)
鳴瓢を演じる津田健次郎の声は最初違和感あったけど、10話の演技はほんとうにはまっていた。
- イドの時間の流れが違うのは、外部からの観察者がいるかどうかの違い、っていう設定はおもしろかった。