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“New Photographic Objects 写真と映像の物質性” 2020.06.02. - 2020.09.06.



写真と映像の物質性
 New Photographic Objects

 埼玉県立近代美術館


New Photographic Objects 写真と映像の物質性” 埼玉県立近代美術館


 主に写真や映像を扱うアーティスト5組(迫鉄平/滝沢広/Nerhol/牧野貴/横田大輔)を集め、それらの持つ「物質性」に焦点を当てた企画展。

この展覧会で紹介する4名と1組のアーティストは、こうした状況をふまえつつ、メディアの物質性を重視した独自のアプローチによってこの領野に新機軸を打ち出しています。数百枚の写真を積み重ねて切断した断面、くしゃくしゃに折りたたまれたプリントの物理的な襞、映像から立ち上がる観る行為に潜在する触覚的な要素など、彼らの作品における特徴的な物質性は、単にフェティッシュなこだわりによるものではありません。おのおのが用いるメディアの歴史や特性、機能に鋭く分け入り、それを更新するための戦略によって獲得された性質なのです。
https://pref.spec.ed.jp/momas/page_20200305063201


 特に良かったのは Nerhol。

“New Photographic Objects 写真と映像の物質性” 展示風景:Nerhol
New Photographic Objects 写真と映像の物質性” 展示風景:Nerhol

Nerhol
グラフィックデザイナー・田中義久(1980年静岡県生まれ)と彫刻家・飯田竜太(1981年静岡県生まれ)によるアーティストデュオ。2007年よりNerholとして活動を開始。ある条件下で撮影された数百枚の写真を積層し、彫り込む手法による制作を継続している。人物をはじめ街路樹や動物、流れる水、あるいはネット空間にアップされた画像データや記録映像など多様なモチーフを選びながら、それらが孕む時間軸さえ歪ませるような作品を制作。そこでは一貫して、私たちが日常生活を過ごすときには見落とされがちな有機物が孕む多層的な存在態を解き明かすことが試みられている。
https://pref.spec.ed.jp/momas/page_20200305063201

 動画を数百枚の連続写真として印刷し、積層させてからカッターやノミで彫り込んで加工した作品。
 横から断面を見ると、膨大な紙が重なっていることがわかる。もとは動画なので、まさしく時間の積層といったところ。彫り込んでいくことによっていびつな形で過去があらわにされる。
 一見すると等高線模型のようで、作品によっては被写体が何かもよくわからずぼやけた色彩が浸みているだけに見えるものもあるし、何が映っているかわりと明瞭なものもある。いずれにしてもそこには微妙な時間のずれが表れていて、それが地形の模型のような物質性を持ち、目の前に確固として存在している。連続する過去の諸局面が部分的に融け合ったかたちで固化しているように。
 本展の「写真と映像の物質性」というテーマをもっとも体現した作品だと思う。これらだけでも見に行く価値がある。(もう今日で会期終了してしまったが)




 あと、ちょうど「迫鉄平 全映像作品2013-2019 上映会」とトーク・セッションをやってた日だったので、それらも観てみた。『剣とサンダル』の上映が始まったあたりから、共に THE COPY TRAVELERSというユニットを組んでいる上田良、加納俊輔とのトーク・セッションまで。

迫鉄平
瞬間を切り取るスナップ写真の技法を応用した映像作品や、複数の瞬間を一枚の写真に畳み込むスナップ写真のシリーズにおいて、「決定的瞬間」から被写体と鑑賞者を解放することを試みている。何の変哲もない光景をとらえたスナップ写真を時間的に引き延ばしたかのような映像作品で、2015年の「Canon写真新世紀」グランプリを受賞。
https://pref.spec.ed.jp/momas/page_20200305063201


 迫鉄平の作品は、固定視点で撮られた「スナップ動画」「動きのある写真」みたいなもので、iPhone の Live Photos をちょっと長くしたようなもの、といった感じ。だいたい10秒前後ぐらいの長さ。なんとなく題材や「おもしろいポイント」がはっきりしているものもあれば(螺旋階段の前でベビーカーをくるくる回す女の子)、ただずっと車窓を映し続けているものもある(電車とかは「車内の景色」と「車外の景色」のふたつがあるところがおもしろい、という話がトーク・セッションで出ていた)
 そうした個々の動画群がどういった連なりで構成されているのか、というところも興味があったんだけど、そのあたりの話までは出なかった。特に深い意味を込めて連ねていないような感じもしてたんだけど、章分けされていたり、トップにそれなりに意味/印象の強い動画が置かれている作品もあったりするし、まったく無意味に構成しているわけではないはず。
 特に『Run Up!』を観てたとき、ゴミ収集車のシーンが2回出てくるところがあって、あ、これさっきの続きだ…って気付いたときに急に何か「構成の意図」があるはずっていう感覚を受けた。

 トーク内容もけっこうおもしろかった。
 だいたい「iPhoneをかざして撮り始める契機」「タイトル問題」「編集(トップ、打順)」といったような内容。

  • 撮るタイミング:iPhoneはすぐ撮影開始できるのでそんなに深く考えず撮り始めたりする。ひとつのシーンでふたつ以上のできごとが起こっているものをわりと撮ろうとしている傾向は自覚しているとのこと。
  • タイトル:そのときどきの人生/生活の何かが反映されている。聴いてた曲をもじったものだったり、当時考えていたことだったり。
  • 編集において何か軸があるのかどうか。→ないこともないが言語化が難しいよう。








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―Angela Mitchell