“#36 緑色の墓標 1”
本筋から少し外れ、スティール夫人が意外と活躍し始めたところ。最前線からの重要な情報を持ち帰った伝書鳩をめぐる、スティール夫人と大統領の攻防。
とくに、鳩小屋から逃げ出した伝書鳩を大統領側近ブラックモアが追う場面、この10ページ程度のシークェンスがとても良かった。
不気味さを内包しつつも妙に間が抜けた表情と言葉遣いのブラックモア。当然スタンド使いであり、大統領の命によって、雨空に飛び去る鳩を追う。降り注ぐ雨粒を足場に空中を歩く能力によって。なぜかわざわざ傘を差しながら。傘を差して空中を歩く男。なんか中世の銅版画にでもありそうな絵だ。雨粒を足がかりにして跳躍の連続、眼下には雨に煙る街並、先行する鳩。仮面のようなスタンドが具象化し、雨粒を媒介にして肉体の細片を分離する能力が発動? よくわからないが鳩は空中で仕留められ、階段を一歩ずつ飛び降りるかのように近付く煽り気味の見開き画面。
この一連のシーン。三次元的な動きが躍動感をもって表現されている。構図、モチーフといい、荒木ワールドの最高レベル。ジョジョ第二部のクライマックスあたりに匹敵するかも。(エイジャの赤石によるカーズの覚醒とか。三部でも冒頭でジョセフの念写に気付くディオは気迫があった。)
第二部あたりまではわりと構図に気を配っていて、ひとつひとつの“絵”をきれいに完結させようとしていた向きが感じられたけど、それ以降はスタンドバトルの策略的側面に関心の比重が移っているように思っていた。三部〜六部も、はっとするような構図の絵がなかったわけではないけれど、どうしてもスタンド能力とその駆け引きとか、台詞とかの方が印象が強かったので。
でもひさびさに本来の絶妙なバランス感覚に満ちた絵を見た気がする。やっぱり週刊から月刊へ移籍したことで余裕が出てきてるのかな...。7巻あたりから絵が丁寧になってきてるようにも思う。
ブラックモア、なかなか期待させてくれる。現時点ではなんか強そうに見えるよ。でもどうせ本格的戦闘に入って決着つく頃にはヘタレ化するんだろうなぁ...。あるいは空中を歩く能力なんてなかったことにされちゃうとかも、充分ありえる。まあいつものことだが。
あとは“納得は全てに優先する”のところ。だんだんテーマが絞れてきてる感じ。