第2クールは、プリプロダクション段階からのスタートおよび原作付き作品であるというところが第1クールと異なる。
上山高校出身の5人全員が何らかのかたちで同じ作品に関わることになる。新キャラクターが登場。宮森は担当からデスクへ。
(第1クールについては、http://d.hatena.ne.jp/LJU/20150111/p1)
各話概要
第13話 “好きな雲って何ですか?” | 宮森、デスクになる。井口さん、総作監に。ナベP、独断専行を注意しつつも承諾。しずか、オーディション参加へ。 |
第14話 “仁義なきオーディション会議!” | しずかオーディション。平岡さん登場。みどりが設定制作として参加。美沙の事務所がCG制作で参加。しずか落胆。宮森、平岡さんからタイタニックを紹介される。 |
第15話 “こんな絵でいいんですか?” | 入社パーティ。安藤さん・佐藤さん参加。各話制作開始。久乃木さん登場。美沙、CG打合せで来訪した下柳さん・宮森に会う。最後に、ありあキャラデ却下の通知。 |
第16話 “ちゃぶだい返し” | 井口さん苦悩。監督、みんなに“主人公”と言う。バッティングセンター。小笠原さんの過去。キャラデ原作者承諾。宮森の服装・仕草がかわいい回。 |
第17話 “私どこにいるんでしょうか…” | 三女情報解禁。本田さん訪問。大倉さんの話題。マンフェスPV対応。久乃木さん歯ブラシ作画。交響楽団録音。しずかぬいぐるみショー 。平岡さんに勤務態度を注意。安藤さん・佐藤さんの帰路トラブル。屋上でPV上映。 |
第18話 “俺をはめやがったな!” | 主演声優を育てていく。美術大倉さん参加。タイタニックの問題発覚。万策尽きる寸前、矢野さん再登場。 |
第19話 “釣れますか?” | 矢野さんと平岡さん、車でタイタニックへ。池谷さんを演出で参加させて対処。宮森、社長と武蔵野動画へ。過去のアニメ制作。絵麻梅干し作画。大倉さん美術完成。ED:アンデスチャッキー。 |
第20話 “がんばりマスタング!” | みどり脚本修業。最終話脚本の苦闘。各自のアニメ動機。みどり、落ち込む。平岡さんと円さんの衝突。久乃木さん、風邪の絵麻を訪問。最終話脚本完成 。主人公の飛ぶ理由。 |
第21話 “クオリティを人質にすんな” | 各自のアニメ動機。矢野さん・平岡さんの元同期磯川さん登場。美沙、キャラを担当。遊園地へ。三女第1話放送。瀬川さん、平岡さん外す要請。矢野さん、平岡さんの過去話語る。ザ・ボーンとの酒席。最終話絵コンテ完了。 |
第22話 “ノアは下着です。” | 絵麻、作監補佐に。宮森、瀬川さんを説得。新川-堂本、高梨-平岡。平岡さん過去話、タローによる表彰。しずか鬱屈(4話オーディション時にいた声優がテレビに出演)。久乃木さん頑張る。最終話アフレコ。原作者、最終話を拒否。 |
第23話 “続・ちゃぶだい返し” | 声優・音響打ち上げ。原作者にコンタクト。新キャラクター誕生。しずか抜擢。泣く宮森。 |
第24話 “遠すぎた納品” | 最終話納品。走る宮森。打ち上げパーティ。 |
ストーリーライン
第2クールでの制作スケジュール概略および主要なストーリーラインを整理してみた。
- 基本的に、同じシーンで同じ場を共有する相手を [ ◯ ] としてカウントしている。(焦点の定まった集まり “focused gathering”)
ただし、単なるすれ違いは除外。(池谷がオフィス内を通過していくときなど。)- 判断しづらいケースは [ △ ] としてカウント。とくに久乃木には微妙なケースが多い。美沙来社時や、平岡のひとりごと立ち聞き時などは △ とした。また、航空機視察時、円さんもいるのかどうか自信なかったので △ とした。瀬川-平岡 は直接の応対シーンはないが、重要な相関があるので △ にてカウントした。
- 入社パーティや最終話納品日の朝会・最終話ラッシュチェック・納品後打ち上げなど全体集合時は、そのなかで直接応答が見られるもののみカウント。(たとえば入社パーティ時は、同じテーブルにいた場合は ◯ としてカウントした。)
- 濃い赤は、前述の主要ストーリーライン上で大きな要素となる人物を示す。薄い赤は、副次的に関わる人物。
- なお、撮監佐倉さん・ねいちゃん・音響中田さんなどは第2クールのストーリーでは大きな関わりがないため、対象から外した。
- カウントはわりと恣意的におこなっているし、まちがってるところもあると思う。
ここからわかること。
相関ポイント数が多くなる要因としては、(1) 人と会う頻度が高い職種であること、(2) 物語展開上の焦点が当たること、というふたつが考えられる。両方を満たしていると多くなる。(ex. 宮森、みどり)
必ずしも 合計ポイント=出演時間・頻度 ではないが、それでもある程度比例傾向はあると思う。
そうした意味で言うと第2クールでは、上山高校5人のなかでみどりが大きくフィーチャーされていることがわかる。宮森には及ばないにしても、絵麻よりポイントが多い。一方、美沙はかなり少ないポイントだが、これは第1クールで転職という重要な決断を既に実施しており、第2クールではもはや大きな課題がない状況のためだろう(第1クールの相関数は調べてないけど、美沙とみどりは第1・第2でおそらく逆転してるはず)。また、しずかも顕著に少ない。声優はそもそも制作側との接点が少ないことに加え、しずかだけ終盤までプロジェクトに参加できていない、という状況も反映している。(延々と続く抑制の結果として、23話での開放感につながる。)
職種別の傾向で見ていくと、制作進行はやはり相関数が多い。監督も圧倒的に多い。原画は少ない方ではあるが、作打ちなど打合せをカウントしていくと、直接応答がなくてもそれなりにポイントは増えていく。
葛城Pは対外的職種だが、社内側キャラクターとの接点も意外と多い。
みどりは師匠の舞茸さんにいつも同行してるようなイメージもあるが、実際はみどりひとりで動いていることも多く、ポイント数に大きな差が出ている。設定制作と脚本という職種の違いの他、ストーリーへの関与の度合いの差にもよるのだろう。
久乃木は、コミュニケーション不得手であるわりには相関数が多いとも言える。久乃木に △ が多いのは、他者との関わり方が独特であることも示しているかもしれない。
堂本さんと池谷さんの位置付けもけっこう特殊な感じがある。
業務において特に強い相関があるわけではないキャラクター間の会話・接触にこそ、物語上の意味がある、かもしれない。(cf. みどりと平岡)
全般的な感想
物語としては23話が事実上の最終回。
みゃーもりの泣き顔。あれはもう、あるぴんのシーンに完全に通じる。
「万感の、ありと、あらゆる感情と、時間と物語がこもってるわけよ!」
第2話 “あるぴんはいます!”
――しかも、あるぴんリテイク顛末を見ている視聴者たちとしては、宮森のこのシーンに単なる物語描写として感銘させられるにはとどまらず、これを描いている実際の原画スタッフにも思いがいくわけで…。
アニメだからこその回帰的な仕組み。
- 「SHIROBAKO」23話のラストシーンについて
http://d.hatena.ne.jp/tatsu2/20150320/p1
しずかの後ろは前回を引きずるように暗く、目の前は明るい。
「ありあとあおい」「ありあとルーシー」「ルーシーとしずか」「あおいとしずか」それぞれが何かを託し、あるいは受け取ってエモーショナルな関係に仕立てている。ここまでお膳立てをされては敵わない。
まだ色も付いていない最初の状態であるという事と初めて声優として名前を覚えてもらい、現場に立つしずかはとてもよく似た状態だ。交互に映せば、それは 「これから色が付き、動き出すもの」というモンタージュにほかならない。
SHIROBAKOはかなり登場人物が多い上に、作中作品のキャラクターとも関連付けることができるため、相当に複雑な相関を構築できる素地がある。(上山高校アニメ同好会出身の5人と専門学校出身の3人なんかも対照させることはできそうだ。)
また、アニメ作品であるからこそできる表現なんかも豊富。
このような「アニメでアニメ制作を描くことの意義」に言及している人はけっこう多い。実写ドラマでもおもしろいんじゃないかという感じはたしかにあるんだけど、それでもやはりこの作品はアニメで描かれる必要性があると思う。
- 「SHIROBAKO」の描く虚構と現実のバランス感覚
http://d.hatena.ne.jp/tatsu2/20150202/p1
修羅場続きで一寸先に落とし穴が待ち構えている現実、けれど夢を持ち続けたいアニメーション制作という場所へのこだわり、その交錯が見所。そんな本作特有のバランスを支えているのは、隅々まで徹底して虚構と現実を対立させていること。
ペットボトルを顎にのせて頬杖代わりにする「現実的なあるある感」を持ったポーズと、実に「フィクションあるある」のオーバーリアクションポーズ。
[ … ]
ペットボトルに顎を付いた宮森のカットは、ミムジー&ロロ(妄想)パートの直後であり、一瞬ハッとさせる。「こんな現実にありそうなポーズで、あんなフィクションの妄想をしているのか」という対立を何気なく流しているわけだ。
基本的にはリアル描写寄りな作品だと思うけど、アニメ的な誇張もわりと含まれてはいる。(たとえば23話の、夜鷹書房へ乗り込む監督など。)
それらのバランス、対比がうまくできている。
あるぴん顕現 のところも感動的だったし、「アリアになった…」にこっ、のシーンも泣けますね。ああいうふうに、アニメキャラクタが「現実」に降りてきた、っていうのを 表現したい、そしてあわよくば赤矢印みたいに、SHIROBAKOの世界も我々の現実世界に立ち現れてほしい、そんな気持ちなんじゃないのかな。
そこで、最初の「この作品が(実写ではなく)アニメである理由」です。それは「アニメの絵がアニメの絵でアニメを表現する」ことで現実と虚構のゆらぎを最大化しようとしている、だと思っています。
こんな面白さは実写じゃ構造的に無理じゃないの、ってのが今日の長いお話の結論です。
実写ドラマじゃなく、アニメでやるからこそ意義があるし、おもしろい表現ができる、っていうのはとても同感。
第1クールに特に多かったけど、苦闘の結果できる作中作品の断片が実際に視聴者にも示されるというのが説得力ある。第2クールだと、大倉正弘=小倉宏昌によるありあの故郷。“杉江三日伝説”のアンデスチャッキーOPも第2クールで映像として示された。
『えくそだすっ!』最終話の杉江さんのラフ原による馬の作画を井上俊之がおこなっていたりなど、現実の業界リソースを目一杯活用してつくっているという点も、回帰的構造および作品外世界への拡張という点でおもしろい。
- SHIROBAKO作中の多重なメタ構造が面白い場面を紹介する
http://d.hatena.ne.jp/rikio0505/20150305/1425561977
そのアニメのデスクが新人声優を励ますシーンです。それをアニメで描いているあたりで既にメタなんですけど、中でも年齢の近い同性から声かけてあげたら少し緊張もほぐれるんじゃないかというナベPの提案でもあるわけですが、この鈴木京子というキャラクターのモデルがどうも宮森を演じている木村珠理さんらしい、というところが凄くメタメタしいわけです。
「とっても酸っぱ〜い顔。(少しリアルを誇張してコミカルに でも美しさを崩さずカワイサもありで)」の作画の参考にするために、
絵麻自身(あるいはあおいやみどり)の酸っぱい顔を、
アニメ作中で出てきた絵コンテの指示通りに、
アニメーターさんが作画をする。
アニメの「絵」だけじゃなく声優、あるいは制作も含んでメタに拡がっていける、っていうところも特筆すべきところ。
登場人物が実際のアニメ業界の人たちをモチーフにしているということも作品領域の拡張に貢献している。(モデルと見なされている人物たちがSHIROBAKOに絡んだ発言をしていたり。)
エンドロール
この動画は貼っておかなければ。
特別エンドロール、というか総合エンドロール。
これ見てると、スタッフの写真が作品内容にかなりオーバーラップしてくる感じがあって、それこそ SHIROBAKO を見終えたための効果だと思う。