このところの Hip Hop/Rap になかなかしっくりくるものがない…としばらく思っていたのだけど、Kendrick Lamar の最新作はすごくよかった。
単体だと Earl Sweatshirtの “2010” とか JPEGMAFIAの “OG!” とか、いいなと思う曲はあっても、革新的というまでには至らず、その点この “Mr. Morale & The Big Steppers” は、楽曲としてのチャレンジとラップとしてのチャレンジで明らかに新しいものを聴いているという感じがあった。
単調なトラックにただラップが乗っているというものではなくて、両者の統合としてサウンドがつくられている。2部構成全18曲のアルバム全体としても、モチーフ的に繰り返されるコーラスなどによってトータルでの楽曲づくりが意識されていることがわかる。
これらのプロダクションは、OKLAMA名義でのセルフ・プロデュースに加えて、過去のアルバムでも大きく関わってきた Sounwave や DJ Dahi がおこなっている。曲数では J.LBS も突出している他、The Alchemist も参加している。
ピアノとドラムで変転しながら進む楽曲、ストリングスをエレクトロニックにアレンジした楽曲など、ラップなしでも音楽として成り立っているぐらいに良い。そこに加えてラップもサウンドの重要な要素となっていて、トラック+ラップでヒップホップという音楽だというのがあらためて確認できる。
ラップの内容、メッセージ面はこれまで以上に内省的なものとなっていて、弱音ともいっていいような部分が随所に見られる。ジャケットでキリスト教モチーフの「茨の冠」をかぶっているのが象徴的。
前のアルバム “ DAMN.” のキーフレーズが “Nobody pray for me” だったとして、このアルバムでは “I can’t please everybody” (“Crown”)、“He is not your savior” (“Savior”) といったところか。
極めつけは最後の曲 “Mirror”。
「鏡」っていうタイトルも示唆的なんだけど、
“Sorry I didn’t save the world, my friend”
“I was too busy buildin’ mine again”
“I choose me, I’m sorry”
…なんてほんとうに心の底からの叫びって感じがあるし、歌とラップを織り交ぜて表現されるリリック、何より曲もとても美しくて……。
この曲が唐突に終わってアルバムが閉じるのも逆に余韻が残る。
Kendrick Lamar
Information | |
Birth name | Kendrick Lamar Duckworth |
Origin | Compton, California, US |
Born | 1987 |
Years active | 2004 - |
Links | |
Official | https://oklama.com |
YouTube | https://www.youtube.com/channel/UC3lBXcrKFnFAFkfVk5WuKcQ/video |
https://twitter.com/kendricklamar | |
Label | Top Dawg Entertainment |