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Kangding Ray “ULTRACHROMA” (2022)



Ultrachroma



 これまでのダークでクールなインダストリアル・テクノからだいぶ変わった。特に、単調でミニマルだったビートがもっと重層的で構築的なものとなったことが決定的。アクアティックでコズミックなシンセサウンドも際だっていて、それらを伴い繊細で複雑なビートラインを疾駆する感覚が気持ちいい。

 アルバムタイトルの “ULTRACHROMA” という語からは、暗闇のなかを人工光で照らされた鮮やかな色彩といった感じが連想させられる。でも、この語の接頭辞 “ultra-” は「色彩の極致」というような意味ではなくて、「色彩の超越」「色覚外」といった意味を与えていると見なくてはならない。
 単なる「豊かな色彩」ということであれば “CORY ARCANE” のプレスリリースでも表現されていた(“the sound (…) would weave complex rhythms and futuristic textures into a beautifully coloured, pixellated surface.”)。“ULTRACHROMA” はこれよりさらに先に進んだ世界、「人が捉えられない感覚領域」を探求したいということなのだろう。本作品での豊潤な音響体験、それはあくまで人が知覚できる断片であって、われわれがたどりつけない真の世界はもっともっと濃密なのだ、というような。
 実際、サウンドのディテールはどこを取っても緻密で、自分の感覚さえ届くならはるか深みまで続いていきそうでもある。

 そもそも音響作品で「色」を表現しようということ自体に暗喩としての力量が要求されるところ、「色」を超えようというのであればより説得力が必要となってきそうなものだけど、このアルバムは充分に成功している。




Kangding Ray

Information
Birth name    David Letellier
Born1978
OriginFrance
Base  Berlin, Germany
Links
Officialhttp://www.kangdingray.com/
  SoundCloud  https://soundcloud.com/kangding-ray
  Twitterhttps://twitter.com/kangding_ray
Labelara  https://ara-aboutrecordingartists.bandcamp.com/

ASIN:B01NBVNKXK







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―Angela Mitchell