大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
国立新美術館
国立新美術館で開催。
ここは多数の展示室を持つ巨大な美術館なのでいつも雑多な展示をやっているイメージがあるけど、ちょうど日展とイヴ・サン・ローラン展も開催されていて、脈絡のなさがいつにも増して際立っていた。それぞれを訪れる客層がけっこう違っていたと思うのだが、そうした人々が雑然と混合して1階のロビーとカフェに溢れている状態がわりとカオスだった。
目玉は最初に待ち構える《Gravity and Grace》と、暗闇の部屋で展開される《Liminal Air Space》で、どちらもアートスペースの大きさを活かしたインスタレーション。
最近は美術館での写真撮影も認められることが多くなってきていて、この展覧会も全面的に撮影可だった。《Gravity and Grace》も写真を撮る人が目立っていたけれど、写真を媒体に体験共有が広がることは意義があると思う。一方、《Liminal Air Space》は写真が撮りづらい作品なので、現地で体験しないとなかなかわからない価値がある。
この展覧会は無料なので、他の展示を見に来た客がついでに覗いていきやすい閾の低さがあるが、そうした偶然的な観客も含めて「おもしろいものを見た」という声と写真が拡散して集客性が働きそうな仕組みが成り立っている気がする。
大巻伸嗣(1971年岐阜県生、神奈川県在住)は、「存在するとはいかなることか」という問いを掲げ、身体の感覚を揺さぶるような大規模なインスタレーションを創り出してきた現代美術家です。大巻は、そうしたスケールの大きな創作を、日本はもとより、アジアやヨーロッパなど世界各国で発表し、高い評価を得てきました。また、地域を活性化するアート・プロジェクトから舞台芸術まで、多くの人々と協働して空間を変容させるさまざまな現場でも比類のない資質を発揮しています。[ … ]
本展覧会は、国立新美術館で最大の、天井高8m、2000m²にも及ぶ展示室をダイナミックに使って開催されます。この広大な空間でなければ展示できないインスタレーションは、観客の身体的な感覚と強く響き合い、細分化した世界に生きる私たちが失った総合的な生の感覚を喚起することでしょう。展示には、映像や音響、そして詩も用いられるほか、会場内でのパフォーマンスも予定されています。大巻が創り出す、現代の総合芸術をお楽しみいただければ幸いです。
大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ 企画展 国立新美術館
《Gravity and Grace》
光と影を投げかける巨大な花瓶。透過する花柄模様でできていて、本来想定される中身が器に投影されているような図式。
天井の高さ、部屋の幅・奥行きのサイズ感・プロポーションがしっくりくる。
《Liminal Air Space》
微かな月明かりを浴びて浜辺へ打ち寄せる波。
暗闇のなかで黙って波を眺めるという体験をまわりの観客と共有することまでが作品の一部となっている。
《Linear Fluctuation》
小さな細長い廊下の左右に連続する絵と正面突き当たりの一枚。
横方向が強調される画面構成とさまざまな色彩が、次のパートへつながる予兆として作用している。
《Rustle of Existence》
テクストはない方がいいと思ったけど、視野いっぱいのスクリーンを森林が埋め尽くす映像はよかった。
《影向の家》のためのドローイング
越後妻有アートトリエンナーレ2015で発表された《影向の家》のためのドローイング。