::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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“ザ・クリエイター/創造者”






“The Creator”
 Director : Gareth Edwards
 US, 2023


 AIとの戦争が続く近未来を舞台にした物語で、『ローグ・ワン』の監督ギャレス・エドワーズによるSF映画。

 まず、冒頭で出てくる軌道要塞 USS NOMAD の造形と地上をスキャンする独特のムーブメントにやられた。
 それから、スキャニングの光に先導されながら輸送機が侵攻するときに Radiohead の “Everything In Its Right Place” がかかるシーンも、あぁ、いまSF映画を見ているんだ…ということを強く実感させられる。なぜいまこの曲…?と思いつつ、センスなのか単なる好みなのか、とにかく意志をもって選曲しているというのが伝わって、気分が盛り上がる。航空機による小部隊の敵地侵入シーンにこの系統の曲って、意外な組み合わせだけどとても良い。
 その後のロードムービー的展開では、東南アジアの日常風景のなかにロボットや乗り物や機械的な巨大構造物が自然に溶け込んでいる様子が Simon Stålenhag とか Jakub Rozalsk のイラストみたいなテイストだったりして、とにかくSF的な絵が延々と続いていく贅沢な映画。
 後半で出る山岳地帯の寺院などは、ひとつの絵として、いまある数多の漫画やアニメを含めたなかで見てもトップクラスだと感じた。

 アジア要素の強調は、日本語がフィーチャーされるディスプレイ表示や街頭の広告物、映画テロップなどにも現れていて、際どくチープな印象もあるんだけど『ブレードランナー』のただしい踏襲と受け取るべきなのかもしれない。実際、アジアの猥雑な近未来都市を舞台に、身体も精神も人間と見紛う “シミュラント” を据えたストーリーという点では『ブレードランナー』を現代的に刷新したような感じもある。異種同士の主人公ペア、常に空中で存在感を放つ浮遊構造物といった要素からは『第9地区』を思い起こすものがあるし、“Alpha O” が封印されているところは『AKIRA』のようだし……といったように、過去のSF映画から影響を受けている節が随所に見える。あとは、Nirmataの探求、米軍の蹂躙とかは『地獄の黙示録』か。

 ストーリー自体はシンプルだけど、それでいて「天国」だとか「オン/オフ」だとかのキーワードの扱い方がそれぞれ構成的に整理されてるし、死の直後の脳をスキャンするというイーガン作品にも出てくるような装置と寄付された分身のシミュラントというものを伏線にして最後のシーンにつながる──という組み立て方もよくできている。
 最後なんかいかにも『ローグ・ワン』撮った監督だな…っていう感じではあるんだけど、でも自分としては『ローグ・ワン』好きだし、この映画の終わり方にもすっかり満足してしまった。



 

IMDb : https://www.imdb.com/title/tt11858890/






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―Angela Mitchell