::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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 海。



あー海いきたい。
海といえば砂浜ではなく、磯だ。俺の場合。
磯で素潜り。
もう何年も行ってないけど。
 子供の頃よく行った。というか毎年どっかしら行ってた。必ず磯。必需品はシュノーケルと網。あと、足につけるヒレとかも使ってた。目的は狩り。釣りじゃなく、猟だね。自分が潜って、網で魚追い回して、捕獲する。砂浜なんて、甘過ぎだよ。あんなの、まさに単なる海水浴。プールと同じ。
 行くなら、磯だね。そんで、目的がなきゃね。
 磯といっても、さすがに外海じゃ危険すぎだし、かといってほとんど海に接してない潮だまりじゃ汚いし第一小さすぎて自分が入れない。うまい具合に外海と接した適度な大きさの内海を見つけて、狩猟場とする。そのポイント選びが重要。
 シュノーケリングだから、常に視線は海中にある。潮だまりでも、陸上から見たのとは想像を超えるうつくしい世界が拡がっている。極彩色、もう、熱帯の海とそんな変わんないって。房総とか湘南の海でも。珊瑚まではさすがにないけど、色とりどりの海草。外海とつながっていれば水はきれいだし。太陽が燦々と海底に届いていて、すごく明るくって。
 獲物は魚。基本は二種。縦縞と横縞。縦縞はカゴカキダイで、横縞はチョウチョウウオという名前。たしか。けっこうこいつらは熱帯魚っぽい雰囲気してる。他にメジナかもたまに見かける。メジナはきわめて難易度高い。ものすごいスピード速いので。縦縞と横縞は群生型だから、わりと、数撃ちゃあたる的に捕まえられる。メジナは一回しか捕まえたことないけど、さすがにそれは海中戦では勝てなかったので、陸上から、狭いところへ追いつめてってついに捕まえた。で、しばらく家で水槽で飼ってたら、けっこう大きくなった。一方、一緒に水槽に入れてた縦縞とか横縞とかがいつのまにかいなくなってた。あれは今思うと、食べちゃってたのだろうか...。そんで、かなり長期間生きてたんだけど、あるとき死んだ。それは、家族で料理して食べた。なぜか。なんかふつうにおいしかった。あれはあれでただしかったと思う。名前もつけてなかったけど。うちで唯一飼ったペットといえるかな(いや、ハムスターとかもいたな...)。でもペットともまた違う、なんか不思議な関係だった。自分でつかまえて、飼って、最後に食べるって。
 磯には危険もある。まず、ウツボウツボはけっこう頻繁に遭遇する。攻撃には積極的でないので襲われることはなかったけど、うっかり穴に手つっこんでそこにウツボがいたりしたら、やばい。あれは噛まれたらマジやばい。腕なんか食いちぎられるらしい。あとは毒系の魚。カサゴとかね。クラゲは磯にはあんまりいなかった。それから、下手に外海出たら、ほんとに溺れるはず。
 今思い返すとかなり危険だったな...。よくほっといてたよ、うちの親。そういえば一回死にかなり近付いたことある。満潮に近い夕方の時間で、外海にチャレンジしたかったのか、気付いたら外海に出てたのか、覚えてないけど。外海っていっても、まだ完全な外海までは出てなくて、わりと水深が深めで、かろうじて外海との境にいくつかの岩があって波を受け止めてた、程度の領域。それでもなんかものすごい水の流れが速くなってて、水底の岩につかまらないと流されかねない、ぐらいの感じで、水もいつもと違って、外海の冷たさがあって、常に流れてるから泡が混じって視界もなんかよくないし。小魚もどっか行っちゃってて。孤独というか、すごく必死だった。やばい、戻らなきゃ!って。
 なんかね、そのとき見た。外海方向、彩度の低い群青色の海中に、二匹の大きくて細長い魚が悠然と泳いでるのを。1mぐらいあったと思う。なんという魚かもわからないけど、それまで小魚しか見たことなくって、初めて本物の海の魚を見たって、思った。あれが海の生物なんだ。こんな満潮の磯ごときで必死こいてる俺なんかはるかに超越してる。すごくきれいだった。彼らは。

という思い出話でした。











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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもうループを背負ってない”
―Angela Mitchell