::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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 アンドレイ・タルコフスキー“ノスタルジア”(1983)



[あらすじ]
 ロシアの作家ゴルチャコフと通訳エウジェニアは、イタリアからロシアに帰国して自殺した音楽家サスノフスキーの足取りを追ってイタリアを旅していた。ふたりはトスカーナの山村バーニョ・ヴィニョーニにたどり着き、そこでドメニコという狂人の噂を聞く。ドメニコは、世界の破滅から家族を救おうと7年間も家に閉じこめ続けたあげく、妻子は村人に助け出され/連れ出され、残った彼はひとり、半ば廃墟と化した家に住んでいた。
 世界を救うたったひとつの方法は、村にある聖カテリーナの温泉を、ロウソクを持って渡り切ること。その火を消すことなく。しかし狂人と思われているので村人が彼を温泉に近付けさせない。
 ゴルチャコフは彼に興味を持ち、その役を担うことを請け負うが、エウジェニアと仲違いし、ローマへ戻る。帰国の準備をする彼のもとにエウジェニアから電話がかかり、ドメニコがローマで3日間も演説をしているということを聞く。ドメニコはゴルチャコフが義務を果たしたか気にしていたという。それを聞いたゴルチャコフは予定を変更し、ヴィニョーニへ戻る。
 ロウソクを持って温泉を渡り切るために。

[ことば]
 “排水溝や学校の壁、アスファルトに目を向けよ”
 “重要なのは完成ではない
  願いを継続することだ”
 “これが世界の終わりなの?”

[メモ]
 多重なシーン
 接写 箱庭のような世界
 暗がりを描くことを厭わない
 転位 長回しのシーンの中で、人物の構図が変わる

 犬
 雨 雷
 雨の降る家 天井から張られたビニールに貯まった雨水

 鏡のついた扉

 会話にならない会話
 唐突な登場人物

 ラスト。ロウソクを手にもち温泉をわたるシーン。(そこには湯は張られていない。なぜ?)
 温泉をわたる前に、(思い出したように)壁にタッチするところがいい。律儀だなって思わせて。でも、そういう細かいことが、やくそくごと/儀式を成立させる要素として重要なんだ、きっと。
 ひとつひとつの歩み、動作が、すさまじい緊張感をもって、観ている者に、意識を同化させる。
 映画・物語が(音楽や絵画と異なり)、その世界に観客を没入・同化・感情移入させる指向を持っていると定義するのであれば、その意味でノスタルジアはまちがいなく、「物語」だ。









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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもうループを背負ってない”
―Angela Mitchell