“A Retrospective”
2004, Yale Univ Pr
Dan Flavin
ISBN:0300106327
蛍光灯を用いた作品をつくり続けたアーティスト。1933-1996。
光源。自ら発光するものを扱うアート。
たとえば写真は光の芸術だけど、そこに示されているのは光そのものというより光の痕跡。あるいは彫刻であれ絵画であれ、あくまでも光に照らされることによって視覚化されるわけで、それに対しDan Flavinの作品シリーズは、光を放つものそれ自体を対象とする。
並行配置された蛍光灯のストライプによって部屋を仕切ったタイプの作品が、とくに好き。空間を、光によって区切る。その光は抽象的なものにも見えるし、実際は蛍光灯というきわめて俗なものから生み出されているという物質性も保持しているし、両義的。抽象性・物質性を兼ね備えた光が、空間をつくっている。
そして、色。Dan Flavinの光は、色を持っている。色も光の状態。モノクロ写真は光と影の差を表しているだけで、光そのものを表しているのではない、と思う。
なおかつ、蛍光灯は人工的な光であって、人間の意図・プランニングを前提とする。
視覚を与える光こそは空間の源泉であり*1、人工光によるアートは、積極的に空間をつくる試みのひとつとして位置付けることができる。
制約を設けた手法。
蛍光灯のライン照明
光源設定:輝度、照度、色度、明度、彩度、光源の形状・位置
限定されたパラメータを変化させてさまざまなパターンをつくること、それは、パラメータの違いがどのようなアウトプットの違いを生むかの実証/実験として、光と空間の関係を追求し続けたことだったのだと思う。
空間をどうつくるか、という問題について非常に参考になる。