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 “ディープ・ブルー”(2003)



ディープ・ブルー スペシャル・エディション [DVD]

“DEEP BLUE”
 2003
 ASIN:B0002S0JVU







海に棲む生き物の映像をとりとめなく集めた映画。
映像は、とてもきれい。
ナレーションと音楽で、スムーズに紡がれる。
人間が一切出てこなくて90分も飽きないかな、と思ってたけど、退屈するところはなかった。


最初は、学術的映像を多少編集し直した程度、なのかと思ったけど(BBC制作だし)、かなり演出入ってる、とわかった。効果音も満載で。というか後半は、聞こえてくる音はほぼ全部効果音か?と思わされた。あと、マリアナ海溝の俯瞰はCG? 深海編はかなり構成いじってると思う。他もそうだろうけど。ホッキョクグマが、流氷に閉じこめられたイルカを食べようとして失敗し、イルカが氷から開放されて海へ戻っていくところ、なんかは場面のつながりがかなりあやしい気がする。
まあそういうフィクショナルなところも含めて、全体の編集は上手だと思う。それ以前に、素材がすばらしい。決定的映像ばっかり惜しげもなく使っている。どうやって撮ってるんだろうって思うのがいっぱいあった。
夜の海とか。竜巻のような魚群とか。海に飛び込んで泳ぎまわる鳥。シャチすごい。海すごいなー。
...って言ってるのもどうかと思うが、実際、圧倒される。


しかし最後あの終わり方はどうだろう...。
結局それか、という感じ。
ナレーションは途中から余計な感じがしてきた。だんだん情報量が減っていって、妙な詩みたいな世界になっていって。
見る前は、もっと客観性に徹した映像作品なのかと思っていたけど、こういう終わり方をされると、全体のテーマが一気にポリティカルなものに見えてしまう。どうも、自然を題材にした映像は客観的なものであるはずだ、という思いこみがなぜかあるので、こういう映像を見るとつい、政治性の排除された世界にいる気になってしまうけど、そもそも客観的な視座なんてものがありえなくて、作者の意図の介在は避けられない。作者の意図・政治性...というかこの場合、フーコーがいうところの「ディスクール」という言葉がふさわしい。イルカとかクジラに対しての欧米人のディスクール。(というこの言い方もよくある言表だな...。)
この作品ではナレーションが明らかにテーマを顕示しているけど、もしナレーションがなくても、編集することはそれだけでフィクションをつくりだす。
シーンの繋ぎ方。あるいは、何を撮っているか。どのような方向から、何に焦点を当てて撮っているのか。そういったことだけで。
逆にいうともはやそれは作者とは関係なくて、どのようなものからもひとはそこに「意味」を見出しうる、ということでもあるはずなのだが。


それはそうとして、もうちょっと説明を増やして、疑似ツアーな方向にしてくれてた方がよかったんじゃないかな。それじゃ単なるヒーリング映像か?
...それでもいい。ホッキョクグマの子供はやたらかわいいし。冒頭の波の映像も気持ちいい。
これは買ってもいいかも。ただし、次見るときはナレーションは消して見ると思う。










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―Angela Mitchell