“Bellflower”
Director : Evan Glodell
US, 2011
監督・脚本・製作・編集・主演がひとりでおこなわれている低予算映画。
映像と音楽がかっこいい。
内容そのものはたぶん毀誉褒貶で、肯定/否定に二極化されると思う。
俺としては、おもしろい映画だった。
前半はよくありそうな(映画としてではなく現実世界で。)恋愛・青春ストーリーなんだけど、後半〜結末にかけて、解釈が難しい領域に入っていく。雰囲気が変転し、「あれ、こんなに思考を強いる難解な映画だったんだ…?」という驚きがある。
――簡単に言うと、いわゆる〈妄想なのか現実なのかわからない〉系の方向*1。図式設定それ自体としてはもはや新鮮さを感じるようなものではないにしても、そこに絡む演出とか映像表現の効果が見ていて気持ちよかった。
主人公とその親友は、『Mad Max 2』に憧れ火炎放射器や戦闘用車輌の改造に明け暮れてるなんとも痛い青年たち*2なんだけど、その火炎放射器やら戦闘用改造車やらが、妄想/現実が混濁するなかで非常にパワフルなヴィジュアルを放っていて、そのあたりがこの映画のオリジナルなクオリティだと思う。
[その他メモ]
・いろいろさんざんな目に遭った後で、「この街を出て行けば、また新たな出会いがあって新たな生活があるよ!」って鼓舞するような台詞があるんだけど、たぶん他の街に行ってリスタートしたってまた同じようなことは起こり得るよね……と思った。程度の大小はともかくとして、それぐらい、ありふれてる出来事が描かれている。
・俳優たちの演技も、“演技的に上手”なものではなく、リアル志向。台詞まわしや行動も生々しい感じがあって良かった。(←真逆に感じる人はいると思う。)
・『ほしのこえ』に似た点がふたつある、と思った。制作の要がほとんどひとりの人間に担われているということと、作者の恋愛実体験が映画制作に入り混じっているというところ*3。ふたつの意味で “パーソナル”。
・“ベルフラワー” は、監督グローデル自身が住んでいた通りの名前。
Evan Glodell "A lot of various significant good and bad things happened on that little dead-end street."
see. “'Bellflower' Director Evan Glodell Owes Adam Yauch A Flamethrower & Got $1,000 Bucks From P. Diddy”
・ニューヨークが舞台だったら、〈メデューサ〉は絵になっていただろうか? カリフォルニア(そしてその他ほとんどの「ニューヨーク以外の」アメリカ)だから成り立つのかもしれない。そういう「アメリカらしさ」があると思う。
・あんまり直接的な関係はないけど、すごくおもしろかった記事のリンク貼っとく。
“遂に現実と虚構の区別がつかない体験装置が登場 - 理研の「SRシステム」”
*1:“Inception-y” とか言われてる感想を見かけたりした。(というかこんな言い回しがあるんだ……。)
“どっちが”現実なのか、あるいは両方とも妄想なのか、といった議論。
*2:にもかかわらず恋愛には積極的、というのがアメリカらしいというか、日本で同様の設定やると決定的に変わってくるところだと思う。
*3:see.
“Realtokyo Interview / 070:エヴァン・グローデルさん(『ベルフラワー』監督・脚本・製作・編集・主演)”
“映画と。/『ベルフラワー』新鋭エヴァン・グローデル監督インタビュー:監督を絶望から立ち直らせた、啓示の言葉とは?”