すばらしかった。
“エレファント” と “リンダリンダリンダ” が合わさったみたいな感じ。もちろんただそれだけにはとどまらないけど、このふたつが好きな人は “桐島〜” もたぶん気に入ると思う。
1.
“桐島〜” の良いと思ったところは、台詞とか、表情とか、仕草とか。映画が心情を描写するためには説明口調もあからさまな背景音楽もテンプレートな展開も必要ない、っていう当たり前のことがきちんとできている。(←こういうことが映画において当たり前のことであって欲しいと思ってるけど、それは単にジャンルの違いにすぎないかもしれない、ということは否定しない。)
また、この映画には構成上のひとつの仕掛けがあって、それが先に挙げたふたつの映画と大きく違う特徴となっている。それほど突拍子ない仕掛けというわけでもないんだけど、すごく効果的に働いている。
2.
それと、高校生活ってこういう感じだよね、っていう再現度が半端ない。
この点で言うと、今やってる京アニの “氷菓” というのはこの映画の対極に位置するものかもなと思いながら見てた。“桐島〜” と比べると “氷菓” がいかにファンタジーなのかがよくわかる。いや、アニメと実写の違いとかではなく “氷菓” が駄目とかいう意味でもなくて、あれはあれでわりと好きで見てはいるんだけど、一応同じ高校生ではあるのになんかカテゴリーがまったく違うというか。あっちは、われわれが持っている〈高校生活〉という共有情報のなかから一部を使用しつつも、全然別のものとして構築し直された世界、といった気がして。“氷菓” は作画や演出のクオリティが非常に高いため殊更そのあたりのギャップを強く感じる。
で、“桐島〜” の方はそういう「つくりなおされた感じ」「料理された感じ」がしない。素材のまま出てきている、というような。
特にどのあたりからそれを感じるかというと、生徒のポジションの描かれ方。
この映画は、いわゆるスクールカースト上でのいろんな位置のキャラクターを満遍なく描ていて、だから視聴者誰しもが「自分はこのポジションだった」と観れるようにできている。
一方で、異なるポジションに属するはずの各キャラクターそれぞれに、「この局面のこの気持ちはすごく理解できる」という場面があって、つまりそのあたりが高校生というものの共通項というか普遍性なのかも、と思ったりした。
3.
この映画の描写・演出はほんとうに良くできていて、無理のない自然な笑いどころがたくさんあり、また、いろんな意味で手足をバタバタしたくなるようなシーンが随所にある。
なかでも、映画館の場面が良かった。映画見終わったあと同級生の女の子に出くわして、わざわざベンチの隣空けてくれたのに察知できず立ったままでいたり、せっかく共通の話題で会話できるのに微妙な間が空いてぜんぜん盛り上がらなかったりとか……もう、むずがゆいことこの上なかった。
“エレファント”:http://d.hatena.ne.jp/LJU/20100505/p1
“リンダリンダリンダ”:http://d.hatena.ne.jp/LJU/20080331/p1