::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

 [ABOUT LJU]
 [music log INDEX] 
 

 “ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q”







あたりさわりない範囲で言える事柄は少ないんだけど、とりあえず;
見応えあるアクション・シーンはいろいろある。技術・技法としても相当に進んでいると思う。
……内容触れずに書けることはそれぐらいかな。

 
[以下、内容の直接的なネタバレはしていないけど、観た感想と評価をストレートに記述。]


 

0.
まず簡単にまとめると、
『Q』は、世間に広く受けるような映画としては完全に失敗している。
でも、「エヴァ」としてあるべき姿からはまったく外れていない。


1.
 一般的に『序』『破』はTVシリーズや旧劇場版と比べてエンターテイメントとして上出来だと評されていると思うんだけど、その理由は、庵野秀明が結婚して家族を持ったからとか旧シリーズから10年以上経って世の中の風潮も変わったから……というように語られることが多い気がする。
 でも、『Q』を観るとそんな認識は全部ひっくり返ってしまう。やっぱり「円熟」とか「成長」とか「完成」とかっていうのはエヴァの本分ではないな、というのがあらためて認識できる。スタッフロールが流れ次回予告も終わって場内が明るくなってからの、誰も何も口を開かず呆然とした感じというのが、旧劇場版が例の台詞で終わったときとまったく同じで、あー、これこそエヴァなんだよ……という感じが再び体験できておもしろかった。
 『破』 のときも書いたけどhttp://d.hatena.ne.jp/LJU/20100611#S5、「失敗・破綻してこそエヴァ」だと考えているので、むしろきれいな内容で終わってしまう方がたぶん違和感を持ったはずだ。
 ――うんうん、自分で今『破』のとき書いた文章を読み返してみると、『破』の時点で「失敗による成功」ということを書いていたのは、『Q』がこんなふうになってしまった状況をかなり言い当ててたと思う(マリとアスカをコンビネーションとして予想してたことも含め)。実際に『Q』を観たあとの今思う感想もあそこで書いたこととほぼ同じで、あれと全然違うことを加える必要はないぐらい。……もちろんこれは、洞察力がどうとかではなく、単に自分がエヴァをどのように好きなのかがまったく変わっていないということを示しているわけだ。
 
 という感じで、ぼく自身としては『Q』は評価できる作品だというのが確認できた結果となったんだけど、でもやっぱり映画としてはぜんぜんダメだというのも事実。

  • かなり限定され閉塞した舞台で、キャラクターも少なく、全体としてとても “薄い” 印象。
  • 説明の不足。観客に対して説明不足なのはともかくとして、登場人物たち同士で当然あって然るべき説明が少ない。
  • 登場人物たちの活動の裏側がほとんど仄めかされないというのが、どうなんだろう……。とくにNERV側。ものすごく無人な感じなのが。
  • 序盤で沸き上がる「あれ、なんか違うアニメに迷い込んだような……」という感覚。これは必ずしも良くないわけでもないのだが……。最初、並行世界に飛ばされた設定なのかと思った。
  • 『破』のラストから『Q』の冒頭に至るまでの各キャラクターのあれこれをスピンオフとして描いた方が、たぶん一般受けしそうな “良い” 作品になるだろうと思う。

 
 とはいえこういうことは自分の中ではあまり問題視はしてないし、また、新劇場版ではもう考察とか分析とかも意味がないと考えている。
 重要なことは、このまま最終回であるところの『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で制作者たちがいかに“失敗”するかを見て取ること。
 制作者たちが失敗によって成功するその様子こそが、エヴァにおいて見届けるべき主題なのだと思っている。


2.
 それとは別に。
 アクション・シーンについて。
 冒頭にしても途中の戦闘シーンにしても、ああいうメカニカルでスペクタクルなアクション・シーンが感覚としてものすごく気持ちいいということを再確認。内容とか文脈とか完全に切り離して単独でも “ああいうもの” が好きでたまらない。

  • オペレーターによるハッタリ的ジャーゴンに満ちたバックグラウンド・ナレーション。
  • 無機的な効果音。
  • インターフェイスのグラフィクスの数々。
  • 3次元高速機動のアクションとカメラワーク。

 これらの組み合わせ。











music log INDEX ::

A - B - C - D - E - F - G - H - I - J - K - L - M - N - O - P - Q - R - S - T - U - V - W - X - Y - Z - # - V.A.
“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもうループを背負ってない”
―Angela Mitchell