kindle版が出たので読んだ。全6巻。
(以下、ネタバレ含む)
構成
- 明確に前半/後半に分かれる。世界大改変とその後の世界(ポスト・アポカリプス)というパターンの物語構成。
キャラクター
- 主人公がとてもチート。(でもああいう世界だったら少しぐらいチートじゃないと、ストーリー展開できるほど生存できないからしょうがないよね…?)
- 銃と重二輪で戦い、再生能力を持つ主人公。
ちなみに他の作品の主人公は;
ストーリー
- 各キャラのエピソードが回収されずに完結して “投げっぱなし” みたいに言われてるけど、読み終わったときそんな感じはしなかったかな? コズロフとイオンおよびレーフとリルオードというそれぞれの再会が明解な軸になっているからだと思う。(でも結局よくわからない点はいろいろ残る)
- かなり理解しづらい内容だけど、以下の各二項関係で見ていくとたぶん理解しやすいはず。
リルオード + レーフ | 人類総改換計画の端緒。結果、全世界・全人類がつくりかえられてしまうほどの巨大な影響を及ぼすが、すべてはレーフのパーソナルな目的から始まっている。冒頭および終幕でふたりの再会が描かれる。 |
ニアルディ / ナレイン | レーフの構想した人類総改換計画(「種族全体の不老不死化」)に対するふたつの異なる反応。 ・ナレインは「不老不死化こそが人口統制」と肯定。無害にドローン化する手段で人類をつくりかえることを目指す。 ・ニアルディは「星が人間で溢れ返るだけ」と否定。逆相写像重合体の力を利用して、人間を変えないまま世界を根本的につくりかえることを目指す。 DRFが〈ドローン禍〉を引き起こした後、両者は相克するが、結果として世界改変がおこなわれてしまう。 |
イオン + コズロフ | リルオード+レーフという二項関係の裏を成すような関係。イオンはリルオードと同族であり、一方、コズロフはイオンとレーフから生成された存在。 ふたりの別離から再会までがちょうどこの物語全体に相当し、リルオードとレーフの再会に呼応している。 |
庚造一 + カノエフユ | 常に協働して戦うパートナー。最後に別離し、フユの復活を求める旅が始まる。 |
- 一応ニアルディの敗北をもってきれいに完結してるようにはみえるけど、主人公庚造一の視点で見ると必ずしもそうとは言えないような気もする。
というのも、東亜重工の合成人間たちは設定された目標の達成のためにつくられた存在であり、身体や能力、そしてパートナー関係も、すべてその目標のためにあるはずだから。
ニアルディを倒し復物主世界を安定化(?)させるまではいいとして、その先、彼らの存在意義はどのようなものになるのだろう。- 行方のわからない仲間を探しに行く、という新たな目的を掲げるというのはあり得るかも。壬班や、あるいは最後に共闘したカーダル・スピンダルを。
- もしくは、旧世界のデータ復旧装置あるいは復物主の力を使って“母親”(黒川博士の娘)を復活させる、とか。
- そもそも、戦闘し続けるためだけにあるような身体を持つ彼らにとって、戦闘の起こらない世界は生きるに値するのか?
- 視点としては庚造一が主人公の位置にあるけれど、物語としてはコズロフあるいはレーフが主人公なのだろう。
- 庚造一のような戦闘を宿命付けられた存在に焦点を当てた物語としては、『ABARA』の終わり方がきれいかもしれない。あれも実際よくわからなくはあるけど……「終わりのない戦闘」を示唆したような終幕という点で。
絵柄
- 1巻から6巻にかけて、だんだん絵柄が変わっていく。大きく変わるのは主に人物造形。背景描写のタッチも少し変化してるように見えるけど、これは舞台が根底から変わってしまうことに起因してる面もあると思う。
- 1巻までの分とその後の巻とで出版社・掲載誌が変わったため2年間のブランクがあり、このことも絵柄変化に影響しているはず。(この間に『ABARA』の連載があり、そのまま引き続いて『BIOMEGA』の連載が始まった。BIOMEGA #1〜#10:講談社・週刊ヤングマガジン2004年第29号〜2004年第41号、ABARA:集英社・ウルトラジャンプ2005年6月号〜2006年4月号、BIOMEGA interlink, #11〜42:集英社・ウルトラジャンプ2006年5月号〜2009年2月号)
- 最初の作品『BLAME!』と最新の作品『シドニアの騎士』って、人物の絵柄だけ見ると同じ作者とは想えないほど違ってるように見えるんだけど、ちょうどその中間の移り変わる過程に『BIOMEGA』があるというのが見ててはっきりわかる。絵柄もそうだし、内容の読みやすさ・わかりやすさについても同様。
歴史 けっこうわかりづらいので、わかるかぎりで整理してみた。
- 火星入植と滅亡 [700年前]
- 人類が火星に入植
- 逆相写像重合体の発見:胚珠 [雌性配偶体](←火星の虫) / 花粉 [雄性配偶体](←地球の不死者リルオード)
- リルオードがレーフと出会う。
- 火星での実験
- リルオードがレーフと別れ、火星へ。
- 胚珠と花粉を受精させる試みがおこなわれ、成功。(←おそらくリルオードが介在?)
- 胚珠が人間への感染性を獲得し、N5SVが生まれてしまう。この結果として〈ドローン禍〉が起こり、火星入植地滅亡。
- リルオードはN5SVに感染せず、ドローン化を免れる。
- DRFの誕生と不老不死の研究
- ニアルディという異能者の誕生
- レーフ
- 火星再調査 [現在]
- 東亜重工の合成人間によるN5SV適応者確保作戦 [物語開始]
- 大改変後の世界 [物語中盤]
- 庚班他、生存者たちは復物主世界のさまざまな時空点に着地する。
- ニアルディは復物主と融合しこの世界に君臨していたが、逆に自我を吸収され始めている。ニアルディは復物主を完全に支配するために〈復物主の子〉を器とし再発芽させることを画策。復物主世界の〈人間〉のなかから適性者を選び人工授精をおこなった結果、ヤーから〈復物主の子〉フニペーロが誕生する。
- ニアルディ、フニペーロの奪取に失敗。フニペーロは庚班に保護され、共にDRFの各MSCFを破壊。400年かけて、残り1区画へとニアルディを追い詰める。この間、復物主世界での〈ドローン禍〉発生が進行。
- 庚班・フニペーロとニアルディの戦闘。一方この裏でフニペーロは、レーフが復物主発芽に備え用意していた策によってニアルディに対抗するため、発芽時の願いの主であるコズロフを誘導。その結果、ドローンにより構成されたアンテナ群と共に、ニアルディは消滅する。
- コズロフとイオンの再会。
結局よくわからない点
- リルオードはどこから発生した存在なのか。自然に生まれた存在?
- ニアルディやナレインの異能力は何に基づくものなのか。ドローン化に関連した能力(疑似N5SV)? それとも、逆相写像重合体に関係する能力?
- どちらにせよ逆相写像重合体に関係するもののはず?
- 火星調査隊に同行しリルオードに再会したのはおそらくレーフだと思われるが、もしそうなら、失踪後どのような経緯で火星に至るのか。
- 復物主世界で〈ドローン禍〉が発生した原因がよくわからない。再発芽をおこなおうとするニアルディにより人為的に引き起こされたもの?
- フニペーロ(レーフ)によるニアルディへの対抗策は具体的にどういうものだったのか。発芽に際してコズロフによる願いを成就させること?
- “スイッチ”はテレビのリモコンのメタファであり、映し出されたのはイオンを守りドローンを消失させるコズロフの姿。=これがコズロフの願望世界。
結果、この願望通りに世界からドローンが消え、コズロフはイオンと再会する。
- “スイッチ”はテレビのリモコンのメタファであり、映し出されたのはイオンを守りドローンを消失させるコズロフの姿。=これがコズロフの願望世界。
BIOMEGA 1巻 ISBN:4088772105, [kindle版] ISBN:B00KNNORXU
BIOMEGA 2巻 ISBN:4088772113, [kindle版] ISBN:B00KNNOSPC
BIOMEGA 3巻 ISBN:4088773179, [kindle版] ISBN:B00KNNOSQG
BIOMEGA 4巻 ISBN:4088774051, [kindle版] ISBN:B00KNNOSZW
BIOMEGA 5巻 ISBN:4088775171, [kindle版] ISBN:B00KNNOT8I
BIOMEGA 6巻 ISBN:4088776224, [kindle版] ISBN:B00KNNOT74