ジャマイカ出身、ブルックリンを拠点とするDJによるデビュー・アルバム。
90年代のデトロイト・テクノを深化させたようなサウンド。
テーマや背景については、electronicbeatsの記事が詳しい。
デトロイトのTVプログラム “ The New Dance Show” に触発されてデトロイト・テクノに関心を抱いたのが端緒。今では世界に幅広く浸透しているテクノという音楽が、もともとはブラック・カルチャーから生み出されたものだということを再確認しよう、というテーマでつくられた。
“our land” というのがひとつのキーコンセプトで、M-5 “Ownland Interlude” のなかでMandy Williams Harris のヴォイスが表現している。
念頭にあるのは、奴隷として連れてこられ、抑圧の後、幾度の反乱を試み、やがて独立したジャマイカの歴史。ジャマイカ人がどのようにアイデンティティを打ち立てたか、そこに矜持を持つべきだ、ということを主張している。
こうしたテーマを、北米大陸のアフリカンアメリカンがつくりあげたデトロイト・テクノの上で語り上げるというのが基本的な構図。
サウンドはパワフル。曲調はジャケットにて如実に表現されている。一定間隔で絶えず押し寄せる音圧。反響するヴォイス。
必ずしも重く陰鬱というわけでもなく、ときおり流麗なメロディがかすかに伴われていたりする(M-6 “Untitled Fantasy”、M-9 “So It Go”)。
M-7 “Magenta Riddim”、M-8 “Facety” などはかなりアシッド感があり、ストイックなビートの反復こそテクノの真髄とあらためて理解する。
90年代的デトロイト・テクノの上にコンシャスなヴォイスが乗るというスタイルは、サウンドおよび解放運動の両面でのリバイバルなのだろう。
こうした考え方は近年のブラック・カルチャーのひとつの傾向としてある。テクノの再取得というテーマは Speaker Music と完全に同一。ジャマイカという視座をもってブラック・カルチャーを掘り下げる点では Zebra Katz とも重なる。
なお M-5 “Ownland Interlude” は、M-10 “Ownland” にてビートを加えられたインストとして反復されるのだが、この対はアルバムのなかでコンセプトを示す構成になっていると言える。ループ、リヴァイヴ、エンパワーメントという概念がこの組み合わせによってはっきりと表されている。
TYGAPAW
Information | |
Birth name | Dion McKenzie |
Origin | Mandeville, Jamaica |
Current Location | Brooklyn, NYC, US |
Links | |
Official | |
bandcamp | https://tygapaw.bandcamp.com/ |
SoundCloud | http://soundcloud.com/tygapaw |
https://www.instagram.com/tygapaw/ | |
http://twitter.com/mebetygapaw | |
Label | NAAFI |