静謐で甘美なヴォーカルとシンセによるテクノ。ノイジーなパルスをまとう重いビートに牽引されつつ、端麗で広がりのあるサウンドスケープへ。
8作品目のアルバムとなる “Never the Right Time” は、前作 “It Should Be Us” での試みからは離れ、“Luxury Problems” “Faith In Strangers” “Too Many Voices” の路線に回帰した。これら3作品と同様に Alison Skidmore のヴォーカルを大きくフィーチャーしており、Andy Stott のサウンドにとって欠かせない要素であることが再確認できる。
透明感あふれるサウンドには往年の 4AD を想起させるものがあるけれど、決定的な差異もある。楽器による「演奏」で再現できるものではなく音要素が「配置」されている感覚、これが Andy Stott に限らず現代のエレクトロニック・ミュージックにおける透明感の特徴だと思う。
エコーのかかったヴォーカルラインとバックグラウンドが流れるなか、シャープな要素を多様な位置で散りばめ、圧のあるビートが軸として貫く──こうしたそれぞれの要素の音響的配置が「空間」を構成している。そしてこのような「空間」の感覚が、音の配置されていない余白部分を意識させ、透明性を感じさせる。
“Never the Right Time” では ヴォーカルレスの “When It Hits” でも充分に空間の透明性が形成されているが、やはり Alison Skidmore のヴォーカルと組み合わさったときこそが至高で、シンセとの音響的操作が絶妙、それこそアルバム末尾を飾る “Hard To Tell” のタイトルが示すごとく、得も言われぬ境地。
Andy Stott
Information | |
Birth name | Andy Stott |
Origin | Manchester, UK |
Years active | 2005 - |
Links | |
Label | Modern Love http://www.modern-love.co.uk/ |