::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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 “小さな恋のメロディ”(1970)



“Melody”
 1970
 ASIN:B00005R22H


 「観たことがないなら早く観た方がいいぜ」ってベンジーがしきりにうたってるので、観てみた。
 イギリスの小学生の初恋物語。とってもピュア。「いっしょにいたいだけなのに...」って。
 でも、主人公よりも、トム・オーンショウ/ジャック・ワイルドの方に感情移入してしまう。いい感じにわるぶってて、子供なのにかっこいい。まさにワーキングクラス・ヒーローって感じ。友情よりも恋を選ばれ、すっかりトムを忘れて走り去ってしまうダニエルの背に向かって上げられる悲痛な叫びが、せつない。
 ダニエルとメロディの恋については、あまりに直情的すぎて、ついていけない面もあった。やっぱり大人になってから観てはいけない映画なのかもなぁ...。12才までに観ないと、細胞に流れ込まないのか。
 もう大人の視点でしか観れない。
 でも子供って、ああじゃないと思うな。これはやっぱり大人からみた子供像だと思う。子供のときだってもっとしたたかで現実的に世界をみてたと思うよ。
 ...っていうような目で観ると価値を見出せない映画なのかもしれないけれど。

 だけどまずはロンドンがこれだけ魅力的に描写されているのだけでも良し。街並、インテリア、学校、線路下の廃屋、など。その他にはローラーコースターや海水浴場(ブライトンあたり?)。
 映像もよいけれど、音楽に非常に重点が置かれている。台詞のあるシーンと音楽が優位に流れるシーンとの比率が、ミュージカルのよう。登場人物自体がうたわないだけで。とにかくビージーズの曲がずっと流れっぱなしの印象だけど、映像とはうまく溶け合っている。
 あとは、子供が元気いっぱい。彼らの移動は常に走っておこなわれる、ぐらい動きまわってる。

 キャラクターに関しては、やっぱりジャック・ワイルドのトムが良かった。もはや純粋に主人公たちに思い入れできなくて、第三者的な視点として自然にトムに感情移入していったのかもしれない。トムは良く描かれてると思う。わるぶってるわりには恋愛とか女の子とかいうものに対してはまだ斜に構えてて、それはリアルだなって感じた。
 一方で主人公ふたりの恋はいきなり成立してしまうので、そういうものかー?と素直に入り込めず。そりゃトムもびっくりして叫ぶよ。まあ音楽室のシーンなど、途中の段階もなくはないけれど。まったく迷いなく恋愛状態に切り替わる。うーんでも初恋ってそんな感じなのかな。ただ単に感情に素直なだけかもしれない。というか子供だろうと大人であろうと、恋愛というのは本来そういう、プロセス抜きで生起する(べき)ものなのかも。
 しかし、「名作」「子供の初恋」「純愛物」などと言い表されてしまっていることで、「恋愛とは本質的にはこういうものなんじゃないのか?」とか「共感できないとすればそれは自分が大人になってしまったからだ」と思わされる罠があったりもする。(という見方をしてしまうこと自体もまた大人の視点か。) 子供/大人という区別、純愛/不純という区別を設けることで恋愛が至高の価値に位置付けられる。そういう構図も含めた意味での〈ピュア・ラブストーリー〉の金字塔、であることは確かだ。
 など、意外と考え込まさせられる映画だったり。
 ラストのトロッコの先に永遠を見るのか現実を見るのかで、観る者を測る映画。

 メロディ・フェアはいい曲。








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―Angela Mitchell