インスタレーション。抽象性高い。作品のスタイルはきわめて幅広いが、いずれにせよ知覚がテーマ。
原美術館よりももっと広い空間の方が適している作家だとも思うけど。たとえば2003年の“The Weather project”@テートモダン のように(ISBN:1854374893)。これは見てみたかったな。
とはいえ小粒な作品でも充分にインパクトはあった。
“Room for one corner and Windy corner”
部屋の正面の壁が黄色い光を放っている。照明器具は壁の裏側にあるようだ。詳細はよくわからないが、壁全面がぼんやりと光っている。一方、入口脇には小さな送風機が縦に並んで設置されていて、風を送っている。最初は機能上の必要で付いているものかと思ったけど(照明が熱を持つので冷却するためとか..。でも照明の側にないと意味ないし。)、タイトルを見て作品の焦点のひとつだと気づいた。部屋に入るときにわずかに風を受けて入るということが何らかの意味付けをされているのか。閾? この装置自体がきれいだと思ったりもした。
“Camere obscure”
カメラ・オブスキュラとは、人間大のピンホールカメラのようなもののこと。初めて見た。暗室にスクリーンがぶら下がっている。スクリーン裏側の外壁にレンズがあって、そこから入る光によって外の庭の風景が映り込む。反転された窓。こういう仕組みの窓というのも、あり得るかもしれない。そのためには部屋が暗く保たれていなければならないが。つまり、昼、部屋を暗くしたときにのみ景色が映しだされる窓ということになる。
“Beauty”
暗室のなかに浮かび上がる滝。天井から落ちる水飛沫にライトが当てられていて、虹のよう。しばらく眺めた後、飛沫を出しているホースに目がいく。一見目立たないけど、よく見ると即物的な仕掛けが露出されている。美、およびそれを支えるインフラ。という関係が示されているのだろうか。それは“Space embracer”などでも同様。アクリルの円管を天井から吊り下げ、ゆっくりと回転させているモーター。隠そうと思えば隠せないこともないと思うけど、そうしてはいない。作品を成立させるためのインフラが顕示されている。あるいは、今回の展覧以外の作品には、たとえば“Konvex/koncav”とか“Reversed waterfall”などのように、メカニカルな機構がもっと明確に露出しているものもあって、単にそういう機械的なものが好きな人なのかもしれないとも思った。
あとはタイトル忘れたけど、アクリルリングが三重になっていて、回転しながら光を浴び、多様な色彩の影を壁に投げかける作品。“Space embracer”の発展形。光の色彩がとてもきれいで、見ていて飽きない。仕組み自体は単純な回転運動にすぎないのに、運動する要素が三つあるので、その組み合わせによって生まれる光の軌跡と周期は複雑なものになる。それは天体の運動にも似ている。シンプルな原理で生まれる複雑な事象という意味では、月の満ち欠けとか日食と同じだ。小さな部屋だけど、そこでつくられるイメージは宇宙的。