まったく買う気もなかったのになんとなく試聴したら、最初の数節で速攻購入の決断に至ったシングル。
メロコアと言ってもいいし、エモと言ってもいい気にもなるし。まあふつうにロックなのか。
確信に満ちていて、迷いなく前進していく音。
試聴したところにROCKIN' ON JAPANが置いてあって、ヴォーカルの人のインタビューが載ってたので聴きながら読んでみた。まあなんかメジャーになっていって、その上昇していく状況のなかで立ち位置を見失いかけてた、みたいな定型的なストーリーが語られているのだけど、ちょっとだけ気になる部分があった。
表面上は成功してるし、音も依然ポジティヴなパワーを維持できているなかで、なぜか心理状態は妙な不健康なものになっていて、あるときライヴ前の楽屋にいるときに、〈3階のこの楽屋からステージへ飛び降りたら、みんなに「あいつはすごいことやった!」って印象与えられるだろうな…〉って思いがよぎった、と*1。それは自殺願望とかとは違っていて、何かものすごいことをやりたい、というかやらなければならない、でもちょっとやそっとのことではもうみんな驚かないだろうし、3階から飛び降りるぐらいのことしなきゃだめなのかも、という思考の展開があったようだ。〈そういうのが間違ってることは今はもちろんわかってるんだけど、そのときはなぜかそういう気持ちになっていた〉と語られていて、それが〈不健康だった〉と振り返られている。
単純なダウナー状態ではなくて、周辺事象に流されまくったあげく思考が妙に極端な状態になり、それを自制する機能が正常に働いていない、という状況だったのだろうか。いずれにしてもその不健康さはまったく音に現れていない。音そのものは、絶頂期・最盛期にあるバンドの音。別に驕りも感じられないし、実直。
それなのに。
音が前向きで確信をもっていることと、その作り手が安定した心理状態にあるかどうかは必ずしも一致しない。当然といえば当然のことかも。でもこの曲を聴いてからこのエピソードを読むと、すごく不思議に思う。
迷いがないというのは悩みがないということと同義ではない。むしろ反対に、逆境でこそ確信は生まれるのだろうか。
まわりの状況がいかに凄惨であったとしても、音においては確かな志向を示すこと。
それは、決意というか、態度表明。
3曲入り。3曲とも良かった。
ザクザクしたギター、うねりまくったり、きらめいたり。
歌詞はけっこう繊細。
*1:細部は覚えてないけど大意として。