[特集] もうひとつのデザイン・ユートピア
テクノロジカル・デザイン&アーキテクチャー
ルイジ・コラーニ
p12 ドイツの超高速鉄道列車のデザイン(1989)
日本の新幹線は、300km以上の営業速度で生じる空気抵抗・トンネル貫入・市街地騒音などさまざまな問題に対する流体工学的解答として、嘴状の奇妙なフォルムに至っている。一見デザイン優位でできたかたちに見えなくもないけど、高速鉄道のデザインって、力学にけっこう忠実なんだよな。この世界では結局ポストモダンの遊戯を経由することがないままモダニズムの論理がそのまま進行して、さらに暴走した結果がこの過剰な極端さ、だ。
ルイジ・コラーニによるドイツ新幹線*1のデザインは、そうしたフォルムをさらに極端化したような形状のデザイン。なんか尾翼みたいなフィンまでついてるし...。サイドの丸いのはなに? まあよくわからないが、エアロダイナミクス? ここまでくるとこれらは明らかに純粋力学論理を超えたデザインに見える。でも時速500kmを想定してるっていうから...そのぐらいの超高速だとこういうフォルムになってしまうのかもしれない。
形態とテクノロジーの間にどのような関係があるのかを、一瞥して把握することはできない。ここに恣意性はあるのか? それを判断することは、ますます難しくなっている。専門知の際限ない分化、によって。とはいえ、ここにあるのは、そうしたさらなるスピードの世界がそのままかたちになっている姿であることはまちがいない。
p17 超音速航空機の模型(1983)(JALのロゴが書いてある)
1983 年。しかしこれはすごいなー。まさしく未来、っていう感じだ。なんか最初見たときは前後さかさまに見てて、ものすごく斬新な形状、って思ったけど、そうじゃないとわりとふつうに未来的なものかも...。これが逆だったら全然いままでにないフォルムだなーと思う。なぜJAL?っていうのもあるけど。
あとはいろいろ。p17 超巨大航空機のコンセプトとか、マッハ5で飛行する旅客機のモデル、とか。こういうの早く実現させようよもう2006年だよ。こんなかたちのが世の中の飛行機のせめて1/3ぐらいではもう実現しててもおかしくないって。
それからもう一点思ったこと。できあがった模型なりモックアップはともかく、デザイン時のイラストがきわめてレトロ。どうしてこの世代のデザイナー、あるいはこういう業種のデザイナーはみんなこういうイラストを描くのだろう。CGじゃなく手でエスキースするとこうなってしまう、ってのはまあそうなんだろうけど。エスキース時のイメージはすごく懐古的なのに、できた結果がぜんぜんそれとかけ離れてるって、どういうことだろう。
山中俊治
p43 “Hallucigenia ハルキゲニア01”(2003)
8輪の自動車。もちろん機能上は4輪だけでも走行可能。それなのに8輪も持っているのは、冗長性(リダンダンシー)を確保するため。分散協調という考え方。冗長性を持つことで、さまざまなイレギュラーな走行が可能となる。それはあらかじめプログラムされた動きではなく、予想外の動きに対応することができて、おそらくはその繰り返しのなかで学習し成長していくのだろう。インタビューでは、「生物的な豊穣さを実現できる」と書かれている。
p41 “Cyclops”(9001)
空気圧で動く人工筋肉。
八谷和彦
メーヴェづくりで有名な人。あ、でもメーヴェだとは公式には言ってないんだ。「宮崎駿さんへの配慮もあって公式には言ってないですけど、まあどう考えても「メーヴェ」を作ってるわけです」って。まあこれだけがんばってるからいつかはできて欲しいな。でもほんとはテクノロジー側でもっと大きなブレイクスルーがないとほんとにスマートなものはできないと思うけど。 「「メーヴェ」で落っこちた時に怪我しないように、2年ぐらい前にブラジルの格闘技、カポエィラを始めたんです」だって。落っこちたら怪我っていうかたぶんまず死ぬんじゃない? というかなんでカポエラ? そこらへんのわけわかんない行動力は、好きだ。
あとは「ポストペット」は実は「ハーベスト」のつもりでつくった、って。ふぅん。「スタンドをどうやって実現するのかというのを一時期真剣に考えてた時期がありましたからね」...いい大人がそんなことばっかり。でもそうあるべき。もっとフィクションのものをどんどん実現していって欲しい。いろんな人に。
松江泰治
+81の特集ではそんなに興味引かなかったけど、ここに載ってたのはけっこう良かった。カラーだからかな。