::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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 細田守 “時をかける少女”(2006)






見てきた。
かなり混んでた。たしかに大人気。
上映時間98分、そんなに長い映画ではなく、タイムリープというSFネタを使ってはいるけれどぜんぜん壮大な話にはならず、作中時間としてもごく短期間(何度も繰り返すのでどのぐらいの時間かよくわかんなくなる...。)の範囲で話が完結する。という状況設定・あらすじを知った上で臨んだので、まったく身構えずに気軽に見た。
巨大なコストをかけた映画と比べると、かなりこじんまりとした感じがする。タイムリープ部分も含めて映像に派手なところはないし。
しかし、開始早々に映画に引き込まれ、完全な感情移入状態に入ることになる。きわめてスムーズに。
というのは、つくりがしっかりしていて、外しているところがほとんどないから。キャラクター設定や、台詞。演出。劇的に新しいとかいうのはないけど、丁寧につくられてる感じ。そして、入り込んだらあとはタイトルそのままに駆け抜けるだけ。
この映画をひとことで表すならば、適しているのは「爽やか」ということば。
その印象は特に主人公のキャラクターから来ている。主人公の性格がそのまま、映画を牽引する原動力になってる。
ひたすら前向き。悩むよりもまず行動。そういう性格が、タイムリープという、何度も時間を巻き戻す現象で強調される。
これが失敗だったら今度はこれ、それもだめならこっち!って何度も何度も挑戦。かなり強引な方法にエスカレートしても。まあそんなことを繰り返しているうちにタイムリープの回数制限に到達して、これこそ巻き戻さなきゃ、という状況を招いてしまうのだけど。
そういう深刻な状況下も含め、非常に喜怒哀楽がはっきりしてて、キャラクターが良く表現されている。


これから起こることを、自分の意志によって制御しようとすること。
タイムリープの有無に関わらず、結局主人公がおこなっているのは、これだ。
それは普通に人生に対する態度以外の何物でもないと思うけれど。
状況を少しでも良い方向に持っていこうとする意志。そのひたむきさが眩しくて。


2006年9月9日の時点における自分にとって、見る必然性のあった映画。
...衝動と感情で未来を定めるのは、間違っていない。(ちょっと控えめに。)



[メモ]
未来は、不確定。
あらゆる可能性に満ちていて、生じることを前もって把握することはできない。
不確定な未来は、確定的に扱える対象として仮定し、これに基づいて現在においての行動を決定しなければならない。
そうした決定がやがて未来の事象の一部を現在のものとして確定させ、決定の連続が、未来を次々と現在に引き寄せる。
決定は、意図した結果を生むとは限らない。
むしろ、意図せざる結果を膨大に派生させる。
それでも、未来は、決定に帰属させられる。

(以上、via Luhmann)




この映画を見る気にさせてくれたところ:
 http://www.hirokiazuma.com/archives/000239.html
 http://blog.sonymusic.co.jp/rhymester/2006-07-19-1








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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもうループを背負ってない”
―Angela Mitchell