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 結城充考 “躯体上の翼”






躯体上の翼

躯体上の翼





 自分の好みにかなり合致してる。
 漢字主体の独特な語彙があふれる遠未来小説という点で、少しだけ『皆勤の徒』に似た雰囲気があるかも。でもプロットラインと趣向はぜんぜん違ってて、こっちはかなり正統的。
 エキゾチックな名詞の数々によって動き始めるイントロはわかりづらくもあるけど、初見で馴染みなく思える語群も、よくよく読むと概念として特異なものはないし、ストーリー自体も最終的には明瞭なボーイ・ミーツ・ガールものに還元できる。それも、せつなさ全開の。


  • 序盤を過ぎると、あとはずっと戦闘描写、アクションシーン満載。戦術小説、っていう感じ。
  • 文字制限があるコミュニケーションっていうのは、Twitterっぽくはある。といっても、作中のこのコミュニケーションは多数に開かれたものではなくて、秘匿的に、あくまで一対一に為される。
    制約のあるメディアでの不自由なコミュニケーションから純粋な関係が生まれ得る、というようなことが主眼にあるのかも。
  • 媒体の枯渇による情報の有限化、っていう発想はちょっと目新しい感じがあった。SFとしてストーリーを動かすような中枢設定にはなっていないんだけど、緩慢な退化が纏うやるせなさの構築には寄与している。
  • イラスト分野では、オリエンタルなノスタルジック・モダンとでも言うような独特の架空世界趣向(『帝国少年』みたいな)が一定の人気を確立してると思うんだけど、文字表現分野でも、この小説みたいに名詞構築へのフェティッシュを持つ作品というのがあって、どこか嗜好として近いものがある気がする。
    作中から用例を抽出すると、〈対狗衛仕〉〈緑化政策船団〉〈安全計算委員会〉といった語。固有名としての〈員〉〈滴〉〈磊〉、〈東景〉〈奏囲〉〈見響〉、〈佐久間種苗〉〈低音生活〉など。
    漢字熟語系名詞萌え、みたいな(←もっと適切なタームが既にありそうな気もするが)
  • アニメ化の適性すごく高いと思う。


 最後にもう一回強調しておくけど、ストーリー展開、および全体的な語用と世界観のテイストが好き。











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―Angela Mitchell