2008〜2009年の作品。全26話。*1
作画がすばらしい。
キャラクターデザインや背景、飛行や戦闘の動き。
全編通してクオリティが高く保たれている。
他方、ストーリーやテーマといった面でストレートな感動を受けたと言うには若干ためらいがある。
世界設定は凝っているものの、作中でつまびらかに説明が為されるわけではなく、最終的な物語の帰結を完全に把握できたかどうかは自信がない。
とはいえ、絵や動画としての魅力はそうした疑問符をおぎなってあまりある。
ストーリーも、まるで共感できないとか破綻してるとかいうわけではぜんぜんないし、むしろ丁寧に描かれてはいる。衝撃的な展開もいくつかあって、きちんと視聴者をつなぎとめる。たしかに直截な爽快感があるとは言いがたいけれども、終幕を迎えたときには、ひとつの物語を見終えた感慨が訪れる。
具体的にどういうストーリーなのかというと…… 設定が難しく要約しづらいので省略。
よく見かけるように、ひとことで言うなら ジブリ+エウレカ、って形容したくなるのはやっぱりとめられないものがあるな……。最初期はジブリっぽい印象の方が強かったけど、最終的にはエウレカのイメージが強くなった。
エウレカについては、飛行艇での旅やクルーの雰囲気、終盤の宗教聖地などが特に類似性を醸し出している。
もっとも、エウレカ(交響詩篇)の最重要要素はサブカル引用だと思ってるので、その観点でははっきり異なってる。
では『亡念のザムド』の独自性・特長が何かというと……
まず表象面では、ヒトガタやザムドの滑りのある形状描写。
それから、主人公3人の心理的推移がわりと共感というか納得というかしっかり描けているところ、か。とくにハルは良いキャラクターだと思う。主人公格はアキユキ/ナキアミ/ハル3人均等ではあるのだろうけど、あえて「ハルの物語」って言いたいな……。結局そういう視点で見るのがわかりやすかったし、上述した「物語の感慨」はたぶんハルの目で感じたもの。
あと、茨木のり子の詩はとても効果的に使われていると思う。『魂』『敵について』という詩は、交響詩篇でのサブカル引用全般が果たしていた機能に匹敵するぐらい、この作品の性質を決定付けている気がする。
敵は待つものじゃない
日々に僕らを侵すもの
いいえ邂逅の瞬間がある!
私の爪も歯も耳も手足も髪も逆立って
敵! と叫ぶことのできる
私の敵! と叫ぶことのできる
ひとつの出会いがきっと ある
茨木のり子『敵について』抄
参考
- 監督インタビュー http://www.xamd.jp/special/interview/index.html
- 「そこまで敵を探そうとする積極性って何なんだろう? って考えると、実は「愛する人を見つけたい」って積極性と、実はそれほど大差がないんじゃないか」
- 『解析之書』 http://www.xamd.jp/special/
- 「とても大事なビートカヤックを失うが、その代わりに旅連れとなった人物がもっと大事な存在になる」というところ。物語を丹念に構築している、っていうのがこの切片からも感じられる。
- 『亡念のザムド オフィシャルガイドブック』という本も出てて、たぶんこれ読むと設定については理解が深まるんだろうなぁという気もしつつ、読んではいない。 ASIN:478973434X
- 『亡念のザムド視聴のすすめ。よくわかる尖端島、もといザムドガイド。一話放送後追記』 http://d.hatena.ne.jp/rivfi/20090409/1239297383
- この方の一連のエントリは、非常に作品を読み込んでいて参考になる。
*1:2008年9月に PlayStation 3 で配信開始。その後2009年4月〜10月に地上波でも放送。