Vatican Shadow は、Prurient 名義を筆頭とする Dominick Fernow の多様な活動形態のひとつ。Prurient 同様にダークでインダストリアルだけど、こちらはスクリーミング・ヴォーカルを伴わないインストで、もっと乾いた曲調。
この “Death Is Unity With God” は Modern Love のカタログナンバー100をちょうど刻んだ音源で、自身が主宰するレーベル Hospital Productions から2014年に限定販売した作品をCDとLPでリリースし直したもの。オリジナル版はカセットテープで、“Fireball”, “Enduring Mysteries”, “Easing Of Our Task”, “Oklahoma Military Academy”, “Elohim City”, “April Silencer” と題された6本セットの約2時間30分、全20曲。2枚組LP版はこのうち12曲のみを、3枚組CD版の方は全曲を収録している。また、リマスタリングとして Rashad Becker が参加している。
全編通して基本的に同一のテイストではあるんだけど、6本組20曲という規模なのでそれなりに曲の幅がある。抑えたビートのアンビエントな曲とか、高いBPMで切れ目なくビートが続くトラック、ノイズ多めで微細な揺らぎに満ちた曲など。1分未満のインタールード的な曲がある一方、10分から最大約25分といった長大な曲も散在している。
タイトルやスリーヴに見られる明確な志向性も Vatican Shadow の大きな特徴。
中東地域を主対象とし、宗教/民族/政治問題や紛争/戦争状況を明示あるいは暗示する語句の数々。フェティッシュが伝わってくる反面、皮相的に見えてしまうところも拭えないけれど、ダーク・アンビエントというこのサブジャンルが宿す雰囲気には合っている。
音楽的に近接した位置にある Demdike Stare や Andy Stott なんかと並べてみると、纏っている語彙やヴィジュアルの趣向にそれぞれ違いが感じられ、そうしたあたりにエレクトロニック・ミュージックがおこなうイメージ戦略のバリエーションが読み取れる。
特に銘記しておく曲
M-3 “It's To Come”
M-4 “ATF Sinful Messiah”
M-5 “Koresh Babylon”
M-7 “Koresh Lamb”
M-10 “Texarkana Resistance”
M-11 “Theology Is Life And Death (Pakistan)”
M-12 “Descended On Guayanilla (CNN)”
M-13 “Arms Of Yahweh”
M-19 “Waco Postmortem (Murrah)”
Vatican Shadow
Information
Birth name | : Ian Dominick Fernow |
Origin | : Wisconsin, US |
Years active | : 2011 - |
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Label | : Modern Love http://modern-love.co.uk |