Four Tet のキャリアも既に20年近くに及ぼうとしているけれど、10年ほど前の “Ringer” と “There Is Love in You” によってスタイル上の大きな転機が刻まれたことには共通認識が持たれていると思う。かつての写実的で情感のあるサウンドから、はっきりとフロア寄りへ舵を切ったのがこのときだった。フロアへの志向性は、ループするビート・パターンでシンプルに進行していく構成に表れている。
一方、転換以降のサウンドにも常に繊細なディテールが適度に伴われていて、必ずしもミニマルとは言い尽くせない。今あらためて各アルバムを振り返ってみると、Four Tet の真髄はむしろこちらの方にあると感じる。さりげない細部に緻密な彩りを含むのは、フォークトロニカとも形容された頃から連なる特性でもある。そういった意味では、Four Tet のサウンドは「転向」の前と後ですべてが断絶しているというわけではない。
今回のアルバム “New Energy” に納められた楽曲は、キャリアのなかでの特に連続的な部分から成り立っていて、転向以前/以後という区別を無効にしているところがある。
ここではビートと叙述性が均等で、どちらが優勢とも言えずバランスが取れている。リリカルに情景を描きながらもビートは明確、といって単一のループが続くわけでもなく、起伏を持った展開を見せる。生楽器の多用もそうした豊かさへ寄与している。
“Scientist” “Planet” といったトラックが傑出しているほか、極致は “SW9 9SL”。アルバムのなかで最もリズミカルだけど、ビートレスな部分を含め緩急をもって展開し、流れるメロディラインはどこまでも眩惑的、ひとつの集大成と言える完成度がある。
Four Tet
Information | |
Birth name | Kieran Hebden |
Origin | London, UK |
Current Location | London, UK |
Born | 1978 |
Years active | 1998 - |
Links | |
Official | http://www.fourtet.net |
SoundCloud | https://soundcloud.com/four-tet |
https://twitter.com/fourtet | |
Label | Text Records |