::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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Paul Chan “The 7 Lights” 15 May - 1 July



“The 7 Lights”
 Serpentine Gallery 




 あまり期待しないで行ったらとても良かった。



 ビデオ・インスタレーション
 プロジェクターによって床面に映像が投影されている。
 流れる映像は黒一色の影絵で構成されていて、窓の向こうからの光が、外の情景を影として室内に導き入れているようにも見える。映像のモチーフは概して童話のような雰囲気に包まれている。風にそよぐ樹木や電柱などが画面を大きく占めていたりするが、特に目を引くのは画面内を下から上、あるいは上から下へと流れる無数の浮遊物だ。それはおもちゃのような自転車や、何かの切れ端、逆さになった動物、などさまざまであり、重力を否定した動きに従っていることだけが共通点として見て取れる。全体は常に何かしらが遷移し続けていて、その運動が途切れることはない。やがて光の色も遷り変わっていき、すべてが夕闇に覆われて映像は終わり、そしてまた次第に明るくなる光のなかから同じ映像が繰り返される。

 窓から入る影のようなつくられ方をしている映像であるために、モチーフが童話的であるにもかかわらず、実在感を持ったものとして感じられる。窓の外で本当にそのような光景が繰り広げられているかのような。
 床に投影されるこれらの映像に、鑑賞する自分自身の影を重ねることもできる。このとき両者に見た目の差異はなく、そのことがまた実在感を強める。あるいは、自分がそうした虚構の情景に入り込んでいるかのような感覚を味わう。床面の石のテクスチャーもまた、室内に落ちる影、という雰囲気を高めている。
 ここでのポイントは、現実をそのまま映像化するのではなくて、影というレベルに落とし込むことでリアリティを獲得することだ。虚構の映像をつくるとき、すべての詳細なかたちを備えた映像をつくるよりもその影だけをつくるだけの方が簡単なはずで、そして窓からの光を模してそれらを投影することにより、あたかも室外で起こっている情景のように見せることができる。それがいかに荒唐無稽な光景であっても。





香港生まれのアメリカ人アーティスト。
“1st Light”から始まる映像が各室に映されている。
創世の七日間をそれぞれ一日の出来事として構成した映像。
他に、まったく作風の異なる政治的な作品もつくっている。











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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもうループを背負ってない”
―Angela Mitchell