“Y tu mamá también”
Alfonso Cuarón, 2001
いつか見たいと思ってたのをたまたま今日見たのだけど、ちょうど夏というこの時期にぴったりの映画だった。
メキシコが舞台のロードムービーで、男2人女1人で海を目指す話。暑いなかクーラーをつけずに見たらやたら臨場感があった。車の中で寝てて暑さで目が覚めるあたりとか。
というのはともかくとして最初の印象としては、やはりいろんなところで書かれてる通りに、とてもエロい映画だった。けどあんまりドロドロしてたり情念たっぷりといったところはなくて、あっさり、なおかつわりとコミカルな描かれ方だと思う。全体のなかで性描写の占める割合は高いので、しつこいって感じる人も多いだろう気はするけれど...、映画の描写としてはまったく必然的だ。
何にも不自由せずに享楽的な日々を送る親友同士フリオとテノッチが、夫の不倫が発覚したばかりの人妻ルイサを誘って車で海に向かう。というプロットからの当然の帰結として、ルイサは若い男たち両方と関係を持ち、フリオとテノッチは仲違いし、ルイサは彼らに愛想を尽かして出ていったり...。でも最終的に3人はある種の平衡状態に至ることになる。それを象徴する絵が、終盤に浜辺で並んで座る3人の後ろ姿だ。
しかしこの3人の関係は、どう呼び慣わせばよいのか。友人、恋人、浮気相手、単なる遊びの関係、大人と子供、etc。どれもしっくりこない。
彼らの関係を明瞭に指し示すカテゴリーを持ち合わせていないということに、自分がいかに型にはまった視点に縛られているかがよくわかる。それはすなわち、自分の日常における人間関係がきわめてありきたりなことを示してもいるわけだ。
車窓に流れるメキシコの風景。南米って一度も行ったことないので、どんな空気のところかさっぱりわからないのだけど、この映画からはかなり伝わってくるものがあった。
都市部の高架鉄道脇の幹線道路から、伝統的風習が残ってるような田舎まで、とにかく暑くて、延々と砂と埃にまみれていて。うんざりするし絶望やら不穏な気配やら死の影やらがそこかしこに転がってるけれど(頻繁に挿入されるモノローグと、車窓に一瞬現れて消える数々の光景に表されるように。)、でもそれが無惨な世界かというとそうでもなさそうで、日本のしょうもない(と一般に価値付けられている)郊外的風景がそうであるように、それはそれで魅力的な風景と受け止めることができた。
そのような砂と埃の旅路がずーっと続いていって、ついに車輪が砂に捕らわれ車が止まってしまったときに、その砂はもしかして海の砂なんじゃないか?...と思って夜が明けると目の前にはついに浜辺が広がる。
都市から田舎、そして楽園的な海へと、世界が連続的につながっていること。...なるほど、こういうことが描けるのがロードムービーという形式なんだ、って感心した。
良い映画。