“Le Città invisibili”
1972
Italo Calvino
ISBN:4309462294
- 作者: イタロカルヴィーノ,Italo Calvino,米川良夫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2003/07/01
- メディア: 文庫
- 購入: 9人 クリック: 55回
- この商品を含むブログ (100件) を見る
マルコ・ポーロがフビライ汗に語るさまざまな奇妙な都市の物語…… という体裁を取った小説。
明確な教訓のない寓話、指し示す意味のない暗喩と言ったような、とりとめなく描かれる非現実的な都市の数々。
時折挟み込まれる場面では、都市を物語るということ自体についてふたりが議論を交わす。
9章のうちに全55篇が散りばめられ、数字を伴う題名がそれぞれに添えられている。11種類の題名に、1から5までの数字。一見無作為にも見えるがはっきり規則的な順番で整序されている。クラシック楽曲での動機/主題構造のように構成的で。
[印象に残った個所のメモ]
空間の寸法と過去のさまざまな出来事とのあいだの関係によりその都市はつくりあげられているのでございます。
I 都市と記憶 (p16)
空間と時間という区別があって、その両項が結びつく仕方のうちに都市が成り立っている、と……。どちらが優位というわけでもなくそれぞれ等価。都市というとただフィジカルな対象のように思ってしまうけど、時間的変化も不可欠なパラメータ。
ともあれ、この都市には壁というものがなく、天井もなければ床もございません。この都市をいかにも都会らしく見受けさせるようにするものは何一つないのでございます。例外は水道管だけで、それが、建物のあるべきところでは垂直に立ちのぼり、また床のあるはずのところでは四方にわかれてのびているという具合で、栓やらシャワーやら、あるいはサイフォン、遊水管とやらになって終る水道管の、いわばジャングルでございます。
[・・・] 私のたどりついた説明はこうでございます。アルミッラの水道管のなかを流れる水は、川の精、水の精らの支配するところとなり終わったのでございます。
III 精緻な都市 3 (p64)
都市を構成する技術要素のうちのひとつだけで仮に都市が構成されているのだとしたら。また、それに対応する神話的要素。
たとえば他にも、階段だけとか、照明器具だけとかでつくられた都市などを思い浮かべてみる。それともここでは、水のように流れる要素が含まれるものであることが重要なのだろうか。
「とは言え、朕が心中に思い描きあげた都市は、そこから可能なかぎりのさまざまの都会を演繹できる都市の雛型だったのだ」 [・・・]
「私が考えましたのも、やはり都市の雛型であり、それから他のいっさいの都市を演繹いたしておるのでございます [・・・] それはただ例外、禁止事項、矛盾、撞着、非条理のみによってできあがった都市でございます。 [・・・] 」
IV …………(p89)
モデルによって記述されるということ。
否定による記述。
ときとしては、たった一人の話し手が同時に二役も三役もやってのけなければならないことも起こります、たとえば、暴君と慈善者と伝言役という具合に。
[・・・] 時が経つにつれて、その役柄でさえ正確に以前と同じままではなくなって参ります。もちろん、これらの役が数々の筋立てや見せ場を通じて推し進めて参りますその行為は、何らかの大団円にむかってゆくものでございますし、またこんぐらがった状況がますます混沌となり、障害がますます大きくなって来るように見えるときでさえ、涯しなく解決に近づき続けているのです。
V 都市と死者 1 (p106)
演劇的な都市。役者たちに演じられる物語としての都市。