::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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 “Gravity Daze”










 いつからか「ゲームをやることほど非生産的なことはない」と思うようになり、もう何年もゲーム専用機を所有せずゲーム全般から遠ざかっていたのだけど――
 なぜかこの Gravity Daze というゲームに興味を引かれてしまい、これをやるためだけに PS Vita を買ってしまった。ものすごくひさしぶりで、俺の心をパーフェクトに捉えてしまったゲーム。
 概要としては、“あらゆる方向を「下方」と定義することでどこへでも自由に「落下」していける能力” を持った重力使いの女の子が、空中都市「ヘキサヴィル」を舞台に、謎の敵と重力嵐とに奪われた街区を解放していく…… という内容。
 ゲームとしての最大の特長は、Vita のモーションセンサ機能に完全に適合した重力操作飛行の気持ちよさにある。




TOKYO GAME SHOW2011 TRAILER 少女は、空に落ちる。
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良かったところ。

  • 世界のセンス。東欧だとかジブリ風の中近世建築にインダストリアル要素を加えた、エキゾチックなファンタジー都市の系譜。それを積層的空中都市として3Dで完璧に形成し、余すところなく歩き回れる・飛び回れるという愉楽。
  • キャラクター。定型的萌え要素と異なる(しかし微妙にその要素も残されている適切なバランス。)オルタナティヴなキャラクターデザイン。(開発者コメント:“日本と海外の両方で愛されるようなバンドデシネ風キャラクター”)
  • 界隈描写。建物内に入ることはできないけれど、街を行く人々の動きに細かいディテールを持たせることで、賑わいと生活感の付与に成功している。
  • 遠近感。3DCG演算上の工夫でもあると思うが、遠くにフォグがかかってるのが視界としてとてもリアル。飛行して隣の街に近付いていくと次第にくっきりと輪郭をもった景観へ変わっていく。
  • 飛行の身体感覚。「飛行」ではなく「落下」という能力。風が感じられる動き。3G飛行映像の程よい酩酊が身体的にも実際の飛行感覚をもたらす。ただ飛び回っているだけでも、飽きることなくおもしろい。
  • 音楽も良い。とくに、『異次元世界3 眩惑の道』とか。
  • サブタイトル:『重力的眩暈:上層への帰還において彼女の内宇宙に生じた摂動』。この言語センスとタイポグラフィ、ものすごく好み。

 
 もっとも楽しかったのは、Episode12 『下側に気をつけろ Soigne tes coups bas』。
 世界を貫く巨大な柱に沿って、どこまでも降下し続ける。不可逆の領域をいくつも超えながら、見上げると街はもう見えなくなって、戻れるものかもわからないほどに遠く。それでも下方はまだ果てが見えず、無限に続くかのよう。遙か先には何もかもを飲み込んでいる暗黒が渦巻いている。それにもかかわらず、ただどこまでも落ち進んでいく感覚は気持ち良くて。



メモ

  • 冒頭。世界樹の上の世界。城が建っている。世界樹はここまでしか来てなくてこの上には延びていない?
  • 子どもがトンネルの中に入っていったのを追いかけるシーン。壁に掛けられた絵画には、高層ビルなど現代的情景を描いたものも見られる。また、ここで住人が、自分が夢の存在である可能性を認識しているような発言をしている。
  • 街の住人を重力で飛ばしたり攻撃しようとしたりすると、透明になって消える。→夢の存在であることと関連しているかも。
  • 時空の旅人の発言こそが、世界設定の根幹を語っているものであるはず。
  • 重力と時間の関係。世界樹の下の方は時間の進み方が遅い。上の方は時間の進み方が早い。
    • 一般相対性理論では、ブラックホール近傍などの高重力下では時間の進み方が遅くなる。もしこれが適用されるなら、世界樹の下の方は高重力。上は低重力。
    • キトゥンの出自であると思われる上層世界の“城”は、時間の進み方が早いことになる。
  • インダストリエの塔の上に、ナナウエの原型と思われる物体がある。外殻が少し剥がれて中身が見える。三つ目の「奪われた区画」奪還前。
  • プレジューヌのイベント(Episode7 彼女について彼が知らない二、三の事情)。ネヴィは人の心から生まれるものあるいは人の心と密接な関係を持つ存在。
  • ボゥトヌ
    • 穴が近付いてきている。
    • 世界樹の最下部。外側に行くと、殻状になった根が見える。
  • ナラの台詞
    • 「子猫ちゃん! そうね、今日は…私が知ってる面白いお話してあげる」
      「昔々ね、世界の柱をずっとずっと上まで登ってみた男がいたらしいの」
      「柱の上には見たこともないキレイなお城があって そこで男は素晴らしいもてなしを受けたそうよ 何年かが過ぎて、男は、また柱を降りて家に戻ったら…」
      「驚くことに、家の人達にとって、男がいなかった時間は ほんの一日で、男がどんなに柱の上のお城の話をしても 夢を見たんだろうって信じてもらえなかったんだって」
      「もし、逆に男が柱の下にずーっとずーっと降りて行って… それで戻って来たらどうなってたんだろう? …逆だったらきっと不幸…せ  な」




関連リンク
  オフィシャルサイト
    http://www.jp.playstation.com/scej/title/gravitydaze/
    http://www.jp.playstation.com/psn/store/magazine/120223/02/ (インタビュー)

  インタビュー他
     重力操作感の試行錯誤の話:
      「GRAVITY DAZE」では“何も決めない”ことを貫きました――ディレクター外山圭一郎氏インタビュー
     Mayaを中心としたCG技法の話:
      ソニー・コンピュータエンタテインメント Interview 『横へ・上へ「落ち」ていく新感覚――重力軌道アクションが拓く未知の世界』
     トゥーン・シェーディングと“Living Background”:
      「GRAVITY DAZE」はいかにして生まれたか? そのアートコンセプトと開発工程そして,チームマネジメントを開発スタッフが語る
     オープンワールド形成のテクニカルな話:
      [GTMF 2012]「GRAVITY DAZE」開発スタッフが語る,アートコンセプトをPS Vita上で実現した手法の実際







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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもうループを背負ってない”
―Angela Mitchell