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 大暮維人, 舞城王太郎 “バイオーグ・トリニティ”










 原作:舞城王太郎・作画:大暮維人
 舞城王太郎のことばや世界に、大暮維人のこの絵はすごく合うと思う。

 物語の軸は最初の頃つかみづらい。そもそも世界設定と状況がまずわかりがたい。
 でも絵のおかげで強引に進めていけてる感じ。
 公道をバイク二人乗りで雑談的会話しながら走ってく横を戦車隊の布陣やら巨大クリーチャーと機動兵器の戦闘やらが並置されてて、でもそれでふつうに日常成り立ってる世界ですけど?的な。「なんでこんなことしてるの…?」とか「こいつらって何…??」っていう当然の疑問をとりあえず放置してそれでも進行していける漫画の力。



 この1巻も序盤の核心的局面まで収録してるけど、連載最新号だとタイトルの意味がわかるところまで進行してて。それでもまだストーリーの基本的な構図が読めてこない。最重要キーワードは〈座標0〉ってものらしいのだけども……。
 で、この〈座標0〉なるものの力というか重要性というかが最初に描かれるところがとてもとてもインパクトがある。
 世界を揺らがせる見開き大ゴマ、およびその直後に続く一連のテクスト、垣間見る心象、そしてふたたび世界が正常なラインへ復帰するコマ。……ここは、ことば(原作者)とビジュアル(作画者)が完璧に噛み合ったシークェンスだと思う。



 舞城王太郎の関与ってどの範囲なのかな?ってのも考えたりしてる。
 ウルトラジャンプ2013年4月号付録リーフレット『バイオーグ・トリニティ読本』に、舞城王太郎が書き下ろした『自転車』という掌編が載ってて、これ読むとなんとなく舞城王太郎が当初イメージしてたものがわかるような感じがある。一応基本設定は共通する世界ではあるようだけど、本編とは雰囲気かなり違う。掌編の方はもう思いっきり舞城節全開で、あぁ……この設定は舞城ワールドでこのように消化されるんだ、と思う。
 で、この掌編内ではバイオ・バグ罹患者のことを「バイオーグ」と表記してて、本編内での「バグラー」という表記と齟齬を見せている。末尾欄外にその旨の編集者注記もわざわざ書かれてるんだけど、本編側の重要設定に舞城王太郎そんなに絡んでないのかな?って訝しがらせるに充分。(というか舞城王太郎だったら「バグラー」なんていう日本語英語っぽい言葉使いはしない気がするんだよね……。)
 そうは言っても、本編中でも随所にあきらかな舞城フレーズは確認できるし、先述のようなネームのレベルが今後も維持されるなら別に良いんだけれども。
 いまのところストーリーそのものでそんなにものすごく衝撃ってところは感じてなかったりするんだけど、最新号あたりの進行での人格融合・消失危機みたいなテーマと「トリニティ」でいうのはテーマとしてかなりおもしろくなるポテンシャル感じてて、期待してる。



 そうそう、台詞横書きってのも日本の漫画としてはかなり異色なので銘記しとかないと。実際は読んでるとほとんど意識しない……というか言われないとたぶん気付かないと思う。(縦書き部分もたまに出てきたりもする。モノローグとか)
 ちなみにキャラクターとしては極子が好きです。











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―Angela Mitchell