「驚くべきリアル」展 スペイン、ラテンアメリカの現代アート ― MUSACコレクション ―
The Marvelous Real, Contemporary Spanish and Latin American Art from The MUSAC Collection
東京都現代美術館 MOT 2014.02.15. - 2014.05.11.
スペインのカスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC)のコレクションから、スペイン・ラテンアメリカの作家27人の作品を展示。
写真撮影可。
特に印象深かった作品を以下にメモ。
Carmela García - “Untitled (from the series Paraíso)”
写真作品。構図とか光の感じが良かった。
Fernando Sánchez Castillo - “Architecture for the Horse”
『馬のための建築』というタイトルの映像作品。といっても、ルイス・バラガンの建築のような人と馬の幸せな関係を想像してはいけない。
この作品で扱われているマドリード自治大学哲学科校舎はフランコ政権時代に建てられたもので、キャプションいわく、「デモ鎮圧のための警官隊の馬が構内に入り、スムーズに動けることを意図して設計された」。
映像内では、建物内を実際に騎馬が動きまわる姿を再現している。
Sandra Gamarra - “Guided Tour (LiMac catalogue)”
リマ現代美術館(LiMac)のカタログをそのまま絵画として表現した作品。
他に、村上隆やジェフ・クーンズの作品が美術館内で展示されている光景をそのまま絵画にした作品も。
作品のオリジナリティとは何か、コピーや著作権の問題、アート展示の自己言及 …といったようなことを不可避に考えさせる。そういう考察と議論を生起させることにのみ意義がある作品、と言い切ってもいいと思うけど、同時に、たぶんこういう作品が現代美術の世界に最低限ひとつ存在しなくてはならないとも思う。
Carlos Garaicoa - “On How the Earth Wishes to Resemble the Sky [II]”
都市の夜景を模型にしたような作品。
夜景というのは都市を抽象的に変換する操作とも言えるかもしれない。そのような抽象モデルが元の実相から切り離されてそのまま提示されているような感じがある。
また、さらに星座も模しているようなので、この作品では夜景と星座というふたつの抽象モデルが二重に表現されていることになる。
Jorge Pineda - “Holy Innocents”
キャプションより;「コロンビアで50年以上続いた内戦と、それによって暴力が日常になってしまった日々に言及している。壁の中に隠れている女の子が無邪気にかくれんぼをしているのか、それとも迫る脅威におびえ身を隠しているのか、曖昧なまま不安と謎だけが残る」
このように書かれた場合、その主眼が当然後者に置かれていることは明白だと思うのだけど、文体そのものは見かけ上の二律背反的未決定性を装っている。作品タイトルも、対象となっている問題を直截的に表してはいないし。あくまでも両義的で思考誘発的な表現。
こういうまわり道・間接性というものが、ドキュメンタリー写真とアートの決定的な違いかもしれない。
少し前に話題になっていた、シリア関連の啓蒙動画(http://www.youtube.com/watch?v=n41ToT32TcQ)を思い出したりもした。
美術館建物と関わり合う展示方法という点でも銘記しておきたい作品。