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 “思い出のマーニー”






“思い出のマーニー”
 監督:米林宏昌, 2014
 原作:"When Marnie Was There" by Joan G. Robinson







 “あなたのことが大すき。”
 ……というキャッチコピーやポスターがミスリーディングを誘いつつ、実はおおきなツイストがあって、最後にすべてが明らかになる、という構成の映画。
 よくできている。
 終幕、とても感動したんだけど、それは内容そのものというよりもむしろ、物語構成の辻褄がみごとに整合したことに対しての納得・満足によるものだと思う。
 ジブリ映画のなかでは比較的「ストーリー」に向き合った作品だという気がする。物語展開そのものに重きが置かれた映画だった、という意味で。
 また、物語という概念がテーマ構造にきっちり組み込まれている、という意味でもそう言えると思う。




(以下、最も核心的な部分には触れていないけど、ほぼネタバレ含む)


  • マーニーは何者であるのか、というのが構成上の焦点。
    • 「謎解き」の構図による展開。視聴者としては、想像の産物/夢/亡霊/時間的跳躍/… といったあたりを候補として考えながら観ていくことになる。
    • 「空想のともだち」という可能性については、それなりに早い段階で主人公が自覚的に言及する。しかしこの時点では明らかにクライマックスには程遠い状況。
      真に示されなければならないのは「マーニーがどのような存在なのか」ではなく、「マーニーは杏奈とどのような関係にある存在なのか」ということ。
    • 久子による(口伝の)物語によって、最終的な答へ至るための材料がすべて整う。
    • 主人公自身が答に到達するのは、頼子(=和解した養母)が持ってきた写真の裏を見ることによって。
  • 杏奈はなぜマーニーに会ったのか。
    • ポイントとしては、
      • ベッドタイム・ストーリー
      • 場所  ……〈湿っ地屋敷〉という建物
    • 幼少の頃、自我が確立したかどうかというぐらいの年齢のとき聞かされていた話が、この件に対する秘かな土壌を成している。自分の記憶、握りしめていた写真、これらはひとつの場所〈湿っ地屋敷〉に結びついているのだが、そのことを主人公は意識しないまま成長し物語開始時点に至っている。そして現実のその場所へ行ったことが、潜在記憶のなかにあった〈物語〉を呼び起こし、「マーニー」というキャラクターを現出せしめる。
    • 単に子どもの頃のストレス下における「空想のともだち」という典型にとどまらず、少し違った要素を取り込んでいるのが大きな特徴だと思う。
      それは、「物語が語られる」ということ。
      口伝の物語とその記憶が場所を媒体に総合し、フィクションとしての(=“非現実的な”という意味で)ひとりのキャラクターを現前させる。
      〈物語〉の力だったり〈場所〉の力といったものがほんとうにきれいに表されている映画。
      この作品は、“物語についての物語” として珠玉だと思う。
  • その他
    • 原作の舞台はイギリス・ノーフォークの湖沼地帯。
      日本・北海道に舞台を移したことがよかったかどうかは両面あると思う。
      日記が日本語で書かれているのはちょっと不自然な気はする。
      でもそのかわり、杏奈の瞳の色については強く意味合いが出る。
    • 「口承物語」というのは、聞き手と語り手との何かしらの「関係性」を伴う。物語が語られることが、杏奈の人間関係が構築されていくことに連動している。
      • 日記というのも物語の一種。日記が書き手以外の人物(彩香)によって示されて間接的に語られるというのも、物語の語られ方・伝わり方としておもしろい。










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―Angela Mitchell