ポスト・クラシカル〜エレクトロニカ〜ピアノ・ヒップホップなど多彩な音楽スタイルで活動する GONZALES が、弦楽四重奏団 Kaiser Quartett とのピアノ五重奏編成でつくったアルバム。正統的室内楽を現代のポップ・ミュージックのように解釈し直した音楽、とのこと。
本人による楽曲解説 [pdf]
http://chillygonzales.com/wp-content/uploads/Chambers-introduced-by-Chilly-Gonzales.pdf
これは音楽を語る修辞のバリエーションとしておもしろいと思った。
たとえば、M-2 “Advantage Points”;
軽やかに進んでいくBメロについては、マラソンを完走した後に放出される脳内エンドルフィンだと仮定してみてほしい――(ラケットもしくはピアノを用いた)身体的技術を超えた先にある、純粋な至福だ。
あるいは、M-8 “Sample This”;
サザン・ヒップホップでおなじみのリズムを、4つのバイオリンで解釈。この曲は大音量でかけて、巨漢ラッパーがパフォーマンスしている所を想像してほしい。曲題に命令形(=“こいつをサンプルしろ”)を使ったのは、切迫感を伝えるためだ。
といったような。*1
音楽全般の造詣が深ければ各楽曲の背景を読み解くことはある程度できるのかもしれないけど、それでもこれらの解説テキストで示されるような “意図” を完全に言い当てることは難しいと思う。
だけどこれらのテキストを読みながら各曲を聴くと、たしかにそのようにも聞こえる。
音楽批評文のあり方というか意義というのは、そのように対象とテキストの不可逆関係にこそあるのかも、という気がした。
特に銘記しておく曲
M-2 “Advantage Points”
M-6 “Solitaire”
M-7 “Odessa”
M-8 “Sample This”
M-9 “The Difference”
Chilly GONZALES
Information
Birth name | : Jason Charles Beck |
Origin | : Canada |
Current Location | : Europe |
Born | : 1972 |
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*1:訳文は邦盤ライナーノーツより。