“The Martian”
Director : Ridley Scott
US, 2015
原題:“The Martian”。
主演:マット・デイモン、監督:リドリー・スコット。
飛行機の機内上映で観た。
原作は小説。『火星の人』という邦題で出版されてる。事故で火星に取り残され、地球との交信もできないままサバイバルを始める宇宙飛行士の話。モノローグ主体の記述で、シチュエーションはシリアスなのに、とてもユーモラス。それをうまく映画化できてる。
台詞のコミカルなトーンとか、ログという一人称視点など、もともと映画に向いてた作品だったと思う。
小説版は科学的説明をじっくり記述しているけど、映画ではざっくり省かれている。一方で、何もかもがビジュアルとして表現されているのは映画の利点。内容的にそれほど複雑な情景描写があるわけではないし、映像化されても小説で読んでたときの想像そのままだったけれど……。でも、具体的な人物が映像として表れているのを見るのはやっぱり違う体験。その意味で言えば、マット・デイモンは非常に良いキャスティングだった。また、BGMもけっこう効果的に働いてる。これは映画版ならではの特長かも。原作でも主人公の精神面にそれなりに影響を及ぼしてる要素だし。
- プロットは基本的に原作通り。ただ、細かいできごとはいろいろ飛ばされてる。スキャパレリ・クレーターでの苦闘とか、せっかく入手できた通信手段がまた失われてしまうあたりとか。
映画の時間的制約があるので仕方ないとはいえ、“Look! A pair of boobs! -> (.Y.) ” がそこだけ省略されたのは残念。あれが主人公のキャラクターと全般的な語りのトーンをもっとも端的に表してるところなので。
- あと、邦題が原題とぜんぜん違うものに変えられてる点については賛成できない。まったく意味が通らない題とまでは言わないけど、作品に対する不必要な改変だと思う。
でも、こういう邦題が決定される企画プレゼンだか営業会議だかのプロセス自体には興味ある。
- ビデオログという形式は、こういうたったひとりのサバイバルを見せる映画表現に適していると思った。
観客との仮想的な対話、主人公のモノローグを自然に語れるところ、とか。
といってもこの映画でそういう対話的表現は必ずしも徹底されてるわけではなく、地球およびクルーのサイドはふつうに客観視点の映画だし、マークサイドも、すべてがビデオログではなくやっぱり客観視点で追ってるところがほとんど。その点、小説版だとマークサイドはすべて日記書体となっているので、大きく違う。まあ小説版も、地球とクルーは三人称叙述だったりするわけだが。
- 映画としてはよくできてる。おもしろいし、緊迫感もあるし、爽やかに感動できる。
原作『火星の人』の感想:http://d.hatena.ne.jp/LJU/20141116/p1
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/odyssey/
IMDb:http://www.imdb.com/title/tt3659388/