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 “リトルウィッチアカデミア”






リトルウィッチアカデミア Little Witch Academia 2013
リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード” Little Witch Academia - The Enchanted Parade 2015
 監督 : 吉成曜
 アニメーション制作:TRIGGER
 





概要
 TRIGGER が『キルラキル』と並行して制作したアニメ。完成はこちらの方が先で、TRIGGER にとって制作元請での最初の作品となる。
 2013年に若手アニメーター育成プロジェクトアニメミライ』による公的助成を受けて完成した。
 また2015年には Kickstarterクラウドファンディングを用いた制作で、続編『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』が公開。
 2016年1月、2作品を収録したDVDが発売。ASIN:B016AYWBY2



本編


  

 魔法学校に通う見習い魔女たちの物語で、コミカルなファンタジー。オフェンシブな面や萌え志向とかがない。作風は違うけど、対象視聴者が広範という意味ではジブリと似た位置。アニメーションのクオリティが高いことも共通している。クオリティというのは、とくにキャラクターの動きについて。これはこの作品の最大の特徴。とにかくキャラクターが表情豊かによく動いて、飛んだり跳ねたり踊ったり。それらを描く手書き作画の表現力・躍動感に目を奪われる。
 1作目は26分、2作目でも56分しかないけど、物語としてはどちらも無駄なくスピーディな展開、それでいて昂揚と解放感とをきっちり喚起させてくる。キャラクター造形もそれぞれに個性とバランスがあり、好感度を抱かせる。極端な刺激や驚きはないものの、終始ストレスなしで端的に心地良く、鑑賞後に清涼感を残す作品。



メイキング


 

 作品本編も満足したけど、特典付録のメイキング・ドキュメンタリーも非常におもしろかった。
 リトルウィッチアカデミアはもともと若手育成プロジェクトへの参加として企画された作品。「魔法を学ぶ魔女見習いたち」というのは、若い新人アニメーターたちをなぞらえているらしい。(cf. マチ★アソビ vol.15 『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』 公開記念トークショー ―GIGAZINE
 アニメミライで定められている参加条件には作品の制作を通じアニメーターを育成することなども含まれていて、1作目のメイキングではそうした若手たちに焦点が当てられている。煮詰まって悩んだり、監督の指導で作画技術の真髄に触れたり、納期に追われて机で仮眠する日々を送ったり。
 一方、2作目のメイキングの方は45分もあって、アニメーターにかぎらず、監督・美術・制作進行からプロデューサーまで幅広くスタッフ全般を追った内容。制作各段階のさまざまな面を切り取り、アニメができあがるまでにどういった技術が施されているのか、どういった役割が働いているものなのかといったことがコンパクトによくわかる。SHIROBAKO を実写版にしたみたいな感じ。(……なんか転倒的な言い方だけど。)
 いろいろ目を引くところがあったけど、アニメーター全員で監督によるレイアウトチェックを共有する「作画会議」という独自の仕組みなんかがとくに興味深かった。2作目はアニメミライの企画というわけではないにもかかわらずこうした試みがおこなわれているわけで、普段から育成に力を入れ、制作環境というものに意識的なスタジオであるということが覗える。このようなメイキングを特典に付けることにもそうした一片が表れているし、TRIGGERのプロデューサー舛本和也が以前『アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本』という本を著したことも関連しているはず。また、2作品とも制作資金調達に特殊な方法を使ったということも、広い意味では、アニメ業界を改善しようという模索の一環と見ることができるように思う。

 吉成監督の最後の発言が示唆的。

アッコが立ち直る時に 何を根拠に立ち直るのかなってとこなんですけど
友情を根拠にするのは なんかちょっと違うような気がするんですよね
イベントが大事なんで
友情が大事なんじゃないっていうか…
でも「結果としては友情の方が大事だった」みたいな話にしたいんですよね
たとえばアニメを作るのは
作品が大事なのか仲間が大事なのか みたいな
自分としては 作品至上主義でやって来たわけですよ
[…]
ほんとうは…
それじゃマズイんじゃないか
みたいなことなんですよね

 作品至上主義を捨てたわけではないと思うんだけど、でも、やっぱり作品をつくる「人」も大切なんだ、と。
 こうしたところはアニメ制作とその環境整備に対する意欲的な姿勢としてスタジオ全般に通底しているような気がする。



その他メモ

  • 「魔法学校」ということでハリー・ポッター・シリーズに似た雰囲気もあるんだけど、大きな違いは、こちらは女の子しかいないこと。
    2作目だと学校外の街の情景も描かれ一般人の男の子たちなんかも登場する。
  • アーシュラ先生=シャイニィシャリオの過去には、いろいろ語られていない部分がある。
    • 「二度と輝きを取り戻すことはないと思っていたのに」
       →あきらかに昔なにかあったことを示してるけど、この時点ではどちらかというと続編を期待させる機能として働く面が大きいと思う。
    • 「さて、オーディエンスもあったまってきたし」
       →自分で直接動くより、魔法のメガホンで生徒や住民を鼓舞する方が目立つアーシュラ先生。もともとショーで活躍してた経歴から連なってる感じもある。
  • 魔導石の範囲内でないと魔法が使えない
     →けっこう不自由な魔法原理だと思うんだけど、魔導石にもまだ秘密がありそう。
  • 魔女迫害の歴史
    • 悲劇を模した例年のパレード
       →コミカルに描かれてるけどけっこう重いよね。それがあるからこそアッコの「ハッピータイム」が意味を持つのだけども……。
    • 「長く続けてきた伝統ある行事」を「魔女のイメージそのものをあたらしく」「魔女はこ〜んなイケてるってアピールする!」
       →伝統の刷新、アニメに持たされてきた偏見を解消する奮闘?
  • TRIGGER はそもそも『キルラキル』をつくるために独立起業した会社であり、『キルラキル』制作の若手を育成する機会としてアニメミライの企画に参加した、と語られている。『リトルウィッチアカデミア』という作品の内容には、この「育成」というテーマ・目的に沿ってつくられている面が多々ある*1
        • 見習い魔女たちが魔法学園で学ぶという設定。シャイニィシャリオに憧れて魔女を目指すアッコ。
           →若手アニメーターの成長とモチベーション。
        • はっきりしたキャラ設定・描き分けやすい造形。
           →新人の描きやすさを意図。
        • 日常芝居の多さ。
           →アクションよりもむしろ難しい。新人育成としてあえてそうした。
        • アッコの直情性、挫折と達成。
           →クリエイターの独善性、ものづくりの負の面と作品完成。
    • 全年齢対象を狙ってるのも、『キルラキル』への足掛かりという企画参加理由に絡み幅広い層への浸透を意図したものかも。 
      • 敵が人間ではないこと(竜や巨人)という設定も全年齢的無害性と関連しているはず。
    • 破綻のないバランスよい作品としてできあがっている『リトルウィッチアカデミア』だが、クリエイターの「どうしてもこれをやりたい」という思いに駆動されてつくられたというより、むしろ冷静で明確な目的設定から基本的なつくりが演繹されている、というのがおもしろいと思う。そのあたりが『キルラキル』とは対照的。まあ『キルラキル』にしてもその他どんな作品にしても何かしら戦略的な面はあるだろうけれど、『リトルウィッチアカデミア』の場合は特にそうした気負いのなさが良い方向に働いたという気がする。





 






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