ミニマル。Pt. 1からPt. 3まで全3曲のインストゥルメンタル。2分程度のPt. 2を間奏のように据え、約22分のPt. 1および16分強のPt. 3により構成。Jim O’Rourke、Ricardo Villalobos、Arto Lindsay など多数のミュージシャンとのコラボレーションで制作されている。
微少に律動するギター・ミュートのさざ波がアルバムの基盤を成す。活力の解放をとどめているかのごとく抑制的に進行しつつ、次第にノイジーなギターやシンセ、パーカッションの奔放を許し、しかし全体はあくまでも静かな統合の内にある。“Hubris(驕慢)”と名付けられたアルバムではあるものの、全編での印象としてはどちらかというと「制御された驕慢」といった感じだ。
殊更に反復を追求するミニマル・ミュージックであっても、曲の最初から最後までただひとつのループだけでつくられているわけではない。そこには何かしら変化する要素がある。というより、同一要素の執拗な繰り返しはむしろ変化に対する聴き手の感度を高める。ミニマル・ミュージックで賞味されているのは、実は反復そのものではなく変化の方なのだろう。たとえば The Field のミニマル・テクノでは、シンプルなループの果てに現れるわずかな揺らぎが聴き手に期待の充足と解放をもたらす。
Oren Ambarchi のこのアルバムでも、反復は変化の素地となっている。ただしここでの反復は細かなミュート・カッティングによるもので、繰り返しというより定常的な持続としておこなわれる。Pt. 1ではそのように一定の運動を続けた末、鳴き声のように響き渡るギター・シンセのサウンドが断続して出現する。抑制のなかで待ち望まれた変化として。一方、Pt. 3では絶え間なく移り変わるノイズとドラムが伴い、反復と変動が表裏一体のものとして併走する。それはふたつの力の呼応でもあるし、あるいは衝突でもあり得る。
2曲のアプローチは異なっているが、いずれにおいても、ループは変化を対比し際立たせる。抑制と解放は互いを必要とすると言ってもいいのかもしれない。
Oren Ambarchi
Information
Origin | : Sydney, Australia |
Born | : 1969 |
Years active | : 1986 - |
Links
Official | : http://orenambarchi.com |
: https://twitter.com/orenambarchi | |
Label | : Editions Mego http://editionsmego.com/release/EMEGO-227 |