ロンドンを拠点とするミュージシャンの 1st ソロ・アルバム。PAN からのリリースで、マスタリングは Rashad Becker。
ドライでミニマル。
音数が少なく、散りばめられたスタッカートでむしろ空隙を聴かせるタイプの楽曲。軽やかにスウィングするビートが微少な溜めを伴っているので、音の流れにエネルギーが凝縮されていると感じる。グルーヴというか、圧が張り詰めているような。
The guardian のインタビューでも、リヴァーブで空間を満たすのではなく、「間」をいかに扱うかといった方へ意識を向けていることが語られている。
“People sometimes use reverb in a lazy way, just to fill the space and impose an atmosphere that is emotionally leading you somewhere – woozy or dreamy or dread-y. So I was like: I’m going to not do that. Then you’re grappling with space and how to keep something interesting with this sense of emptiness.”
The guardian Interview - Beatrice Dillon: the most thrilling new artist in electronic music
アルバムは、4〜5分前後の曲と1分台未満の曲から構成されている。
全体的にはっきりとリズム志向で、要素を削ぎ落としビートを露わにした楽曲であるところが共通しているけど、徹底してビート要素のみの曲もあれば、アコースティック要素を添えて、わずかながらに旋律らしきものを流す曲もあったり、表現に少し幅がある。
軽快でありつつも緊張感があって。繊細のようでいてしっかりと構築的。めくるめく転がり跳ねまわるビートに耳を洗われるだけで心地よい。
FM音源でつくられたサウンドの他、多彩なゲストミュージシャンの演奏をサンプリングに使っている。Kuljit Bhamra(タブラ)、Jonny Lam(ペダルスティール・ギター)、Lucy Railton(チェロ)など。M-2 では Laurel Halo もヴォーカルで用いられている。
なお、ジャケットの写真は Thomas Ruff による2014年の作品 “r.phg.06”。
Beatrice Dillon