音楽が好きです。
...このことは、いつだって完全な確信をもって言えると思っていた。
だけど自分の人生を振り返ってみると、音楽をほとんど聴かなくなっている時期もないわけではない。CDを買わなくなるという明確な変化はもちろんのこと、以前は家にいるときに延々と何かを聴くことで至福に満ちていたのに、まったく何も聴かずに長時間過ごすことを苦と思わなくなる体質にまで変化してしまったりする。
なによりおそろしいのは、そのような変化が、ほとんど自覚されないという点にあるかもしれない。最近あまり音楽聴いてないかも...ということを多少気にしたりすることもなくはないけれど、それを異常な変化だと思ったりするまでにはならない。とりたてて大きな問題であると認識せずに、毎日は過ぎていってしまうのだ。
生活の変化や心境の変化とか...たぶん理由はいろいろあるのだろうけれど、それがわかったところで、何か対処したり改善したりしなくてはならないようなものでもないとも思う。あらゆる変化はすべて必然なのだ、と思うし。人間の体を構成する細胞は新陳代謝によって数ヶ月で入れ替わってしまう...というような話があるけれど、それだったら自分の好みが長い周期のなかで変化することだって、何もおかしくはないよね?と思ったりもする。
理由はともかく結果としての状態は明白。
ただ端的に、あまり音楽を聴かなくなってしまっている。まさに今。
そうはいっても音楽が好きだというのはどうも思った以上に深いところに刻み込まれてしまってもいるようで、とくに何か聴きたいという気分でもないのにCDショップに足が向くことがある。そもそも音楽が聴けなくなったわけではないので、ふつうに試聴したりする。このときここでもしとてもすばらしい出会いがあるならば、たぶん簡単にこの周期がまた前のモードに戻るだろうということを頭の片隅で思ってもいるのだが.....しかし既に、「良い」と思う閾値がかなり高くなってしまっているので、なかなか購入に踏み切らない。そして周期は覆ることなく、同じ毎日が続いていく。おそろしいことに。
さて、前置きが長くなってしまったけど、こんなことを書いているのはもちろん、状況が変化するようなことがあったからだ。
ふらふらっとCDショップに寄ってみたら、epic45のCDをふと見かけた。それは2007年発売の4thアルバムで、つまり去年に出たCDだから、もう新作とは言えない。発売時に買ってもよさそうなものを、完全にスルーしていたのだ。そういえばこのアルバムが出たこと自体は知っていたな...タイトルにも見覚えがある...と思い、ちょうど試聴できるようになっていたのでヘッドホンを耳にかけてみる。うんうん、epic45の音って、こんな感じだった、ということを最初のトラックで思い出す。epic45って、目をつぶって買ったってだいじょうぶなもののひとつぐらいに位置付けてたよな...ということも思い出す。何曲かを流し聴いて、これ以上聴く必要はないと思う。むしろ聴いてはいけないと思う。なぜならば、あとはもう家に帰ってじっくり聴くことが決定されたからだ。
やっぱり、定期的にCDを試聴しに行ったり、ネットでレビューを見たり、いつも情報に触れていなければどんどん関心が離れていってしまう。だけど一方で、完全に離れてしまうことにもなかなかならないともわかった。ちょっとした出会いがあれば、いつだって戻れる。
たぶんこのCDによって自分の状態が劇的に変わることまでにはならないと思う。それでも、音楽が生活の中になくたって我慢できる、なんてことはもう思わないはずだ、きっと。
とくに良かった曲。
M-2 “the stars in spring”
M-3 “summers first breath”
M-7 “lost in failing light”
M-8 “you are an annual”
M-10 “winterbirds”