同時代を生きていたはずなのに未だ自分とまったく接点がないままである重要なミュージシャンというのが、いろいろと──というか膨大にいるんだろうなあということはわかってはいるのだけど、たまにそういうミュージシャンの誰かを遅まきながらに知覚することがあったりする。
PJ Harvey もそんなひとりで、彼女の最初の登場をたしかに認識していたしいくつか曲も聴いたことあるはず、そしてその時点で既に高い評価も得ていたことだって覚えているのだけど、今に至るまでちゃんと聴いたことがないままだった。だけど単に俺が聴いてなかっただけで、もちろん彼女自身はきちんと音楽界を生き抜いていて、しかも知らない間におそろしいほど円熟を増していた。
その再発見というか再邂逅をもたらしたのが、ラジオを聴いていて流れた“Black Hearted Love”というシングル曲。
冒頭から最大限に充満するグランジの香り、ハードなギターリフのイントロを経て現れるヴォーカルの存在感、表現力、艶やかさ。それらはそのとき自分がいた環境やおこなっていた作業をたちどころに識閾から消し去って、ただ耳から伝わってくるものだけに自分のすべての世界が占められてしまう。
そうなるともうアルバムの購入までは自動的に進行していくわけだけれど、そこで出会う他の収録曲がまたこのシングルとはぜんぜん異なる多彩なテイストで、なおかつそれぞれ別種の魅力にあふれている。
このアルバムでは PJ Harvey と並んで John Parish の名がクレジットされていて、すべての歌詞とヴォーカルをPJ、作曲およびほとんどの演奏を John Parish というように分担されている。なんといっても訴求力はまずヴォーカルにこそあるのだが、でも楽曲が単なる背景的なものにすぎないかというとそんなこともなく、それ自体で圧倒的な完成度を持ちながらもヴォーカルに完璧に寄り添っている。お互いの個性をはっきり残しつつ、でも組み合わさって相互に引き立て合うような両者の関係は、コラボレーションとして最良のものだと思う。
銘記しておく曲。
M-1 “Black Hearted Love”
M-2 “Sixteen, Fifteen, Fourteen”
M-4 “The Chair”
M-6 “A Woman A Man Walked By / The Crow Knows Where All The Little Children Go” 後半のインスト部分も。
M-8 “Pig Will Not”
とくにM-1、M-2はすばらしすぎる。
あと、全体的に歌詞も印象的。
official : http://www.pjharvey.net/
myspace : http://www.myspace.com/pjharvey
“Black Hearted Love” clip on YouTube : http://www.youtube.com/watch?v=IWrfLhX964I
ASIN:B001RTYKUE