急激にであれ漸進的にであれ、身のまわりの環境というものは、常に変わり続けていく。住んでいる場所だったり、やっている事柄とか、まわりの人々。1〜2年でもけっこう変わっているし、5〜10年となれば激変と言ってもいいほどだ。
どのような変化も必ず良い結果をもたらすとまではさすがに思っていないけれど、でも〈世界〉とは変化させなければならない対象なんだ、というようには思っている。だからあたらしく登場してきたものについてはまず肯定したいと考えるし、現在のこの瞬間にこそ、過去のすべてを凌駕するものが存在することを疑わない。
ところで、そういう自分の基本的な性質というものがありながら、好きな音楽という観点から自分のこの十数年ばかりを振り返ってみると、Prefab Sprout がまったく変わらないままに首位を占め続けていることに気付いたりもする。2位以下のランクはわりと入れ替わってるような気もするし、その日の気分によっても上下するようなものだったりするのだけど、首位については不動のままだ。
初めて Prefab Sprout を知った頃によく聴いていたような音楽、その後に好きになった音楽、最近聴くような音楽、という数々は、ジャンル単位で見たって大幅に変動しているのに、いちばん好きなものについては変わらないんだ…… ということは不思議に思えるし、あるいはそのことに妙に安心したりもする。
「もっとも好きな音楽」というのが今現在も活動中のミュージシャンのものであるというのは、なかなか落ち着かないことでもある。劣化したり、明らかに別方向に挑んでいってしまったりということも充分あり得るからだ。だから自我を仮託するほどに好きなミュージシャンは、理想としては、既に解散したり活動を終えたりしたミュージシャンであるのがいいと思う。自分にとっては Supercar がそうした位置にいて、1998年から2005年までの活動が、結晶化したような不変の価値を持っている。
ずっと前進し続けて前より常に良い曲をつくっていって欲しいって思うけれど、逆に衰えていくかもしれないことも怖くて、もし明らかに無惨な姿になっていくぐらいだったらいっそのこと解散してしまえばいいのに…… なんて思ったりするのは良くないことなのかも? でもブラッドベリが書いているように、“相手をあまりに愛し過ぎたなら、その破滅を願うようになってしまう”ものなのだ。
この“Let's Change The World With”は、Prefab Sprout の8年振りのアルバム。
最初に聴いたときの感想は、けっこう変わってしまったかも、というものだった。冒頭の何曲かが、やけにダンサブルでエレクトロ・ポップな印象のものだったので。
でもよく聴くと、これまでのフォーマットを大きく逸脱しているわけではない。リズムが強調されたつくりになっていて、それが最初のダンサブルな印象につながっていたのかもしれない。全曲ちゃんと聴いたら、わりといつも通りの感じだった。
重要なのは5曲目。
“ Music is a princess, I'm just a boy in rags.
I would gladly spend my life carrying her flags.”
“Music is a princess, I'm just a nobody who'd gladly give his life for her majesty.”