発売時に買ってたのに、なぜかなかなか文章にまとめておく気にならず今に至ってた……。でも6th“barking”を聴いたのと併せて感想を書いておこうと思う。良いアルバム。
Underworld の基本姿勢って無機的な語り口で常に洗練を追求してるところにあると思うんだけど、でも同時にその語りの焦点は必ず都市の猥雑だとか人の営みだとかに向けられている気がする。
とくにこのアルバムの“Beautiful Burnout” “Ring Road” “Boy, Boy, Boy”なんかは、London の都市風景からの直接的なインスピレーションに基づいていることが日本版スリーブ内解説で語られている。たとえば “Ring Road”では、歌うというよりただ喋ってるだけの台詞のようなヴォーカルが、線路沿いの街並だとかショッピングモールの光景だとかカフェの店内を延々と描写していく。ところどころに、風景描写とは異なる台詞が混じっている。断片的な出来事であったり、追憶であったりするような。はっきりした言明ではなくて、意味するところは曖昧だ。
Underworld の歌詞は『深い意味はなくて、言葉遊びのようなものにすぎない』みたいなことがたしか昔のカール・ハイドのインタビューで語られていたと思うんだけど、でもその言葉の選び方・世界の切り出し方には、いつも一貫したものを感じずにはいられない。日常での、目に見える具体的なもの、都市の構成要素、あるいはその断片。それらを写真のように切り取りつつ、何か即座の判断を迷わせる不明瞭なモノローグがそこへ重ねられている、というような。
明らかなドラマだとかメッセージ性だとかから遠く離れていて、それゆえに都市生活がそのままのかたちで表れているように思う。
特に銘記しておく曲
M-1 “Crocodile” 冷たくも昂揚する。
M-2 “Beautiful Burnout”
M-3 “Holding the Moth”
M-5 “Ring Road” 淡々とした情景描写。曲調は比較的明るい方。気怠い。
M-6 “Glam Bucket” 落ち着いたインスト。
M-7 “Boy, Boy, Boy” イントロから最初の歌い出しに至る流れが好きだ。やはりどことなく気怠げな一方、神聖な感じもある。
M-9 “Faxed Invitation” “deep voice”っていうことばが印象に残る。