5th アルバム。前作から7年振りっていうのもなかなかのものだけど、前作も 3rd から7年後のリリースだったっていうのもけっこうな驚きで、つくづくスローペースで息の長いバンドだと実感する。にもかかわらずクオリティは完全に維持されている……というより、さらに研ぎ澄まされたものになっている。傑作と言い切っていいと思う。*1
長くても6分程度、ほとんどは4分以下の短い曲、しかしそのなかには硬質のギターリフと鋭利なアンサンブル、ビートチェンジが詰め込まれていて、密度高く圧力をもって進行する。反復の轟きと変曲点とが成す緩急リズムによる漸層的展開。全体で30分少しのアルバムなのに、長時間に渡り緊迫にさらされ続けたかのような体験として感じられる。
3ピースバンドとして各パートそれぞれの貢献およびその総合が秀逸であることはもちろんなんだけど、それでもやはりスティーヴ・アルビニの重要性を強調しないわけにはいかない。周知なことではあるかもしれないけれど、まとめておくにふさわしいマイルストーン的なアルバムなので触れておく。
これまで無数のミュージシャンの作品にプロデューサー/レコーディング・エンジニアとして関わってきている人物で、一聴してアルビニの音とわかる独特の乾いた曲に仕上げるのが持ち味。デジタル機材によるレコーディング/マスタリングやオーバーダブに依存せず、スタジオ内に巧みなマイク配置を施した上での一発録り、というスタイル。
その極限が自分のバンド Shellac で発揮されている。メジャー一般でおこなわれるレコーディング/マスタリングというのが具体性を捨象してクリアなサウンドのみが抽出されたような音響構成なのだとすれば、アルビニの場合では、楽器や演奏されている場所・空間を感じさせることを第一に追求している感じだ。どちらかというと音質としては粗いところもあり、とりわけヴォーカルの少し後退したような位置が特徴的。でもそれが小さなスタジオ/ライブハウスの音響感を表現し切っている。
そして Shellac の楽曲はそうした志向性にもっとも適合している。3つのパート+ヴォーカルによる相克と融合・緊迫と統合、それはこの技法によってこそ完璧に再現できる。
mass, time, velocity.
……というのは、1st アルバム “At Action Park” のスリーブでメンバークレジットとして書かれている表記で、ベース・ドラム・ギターをそれぞれ指している。その後も定常的に用いられてるクレジットってわけではないんだけど、このバンドの普遍的構成を絶妙に表してるものだなってあらためて思う。
特に銘記しておく曲
M-1 “Dude Incredible”
M-2 “Compliant”
M-3 “You Came In Me”
M-6 “The People's Microphone”
M-9 “Surveyor”
Shellac
Information
Origin | : Chicago, US |
Years active | : 1992 - |
Current members | |
Steve Albini | : electric guitar, vocals |
Todd Trainer | : drum set |
Robert S. Weston IV | : electric bass, vocals |
Links
Label | : Touch & Go http://www.touchandgorecords.com/bands/band.php?id=22 |
Studio | : Electrical Audio http://www.electricalaudio.com/ |