ベルリンを拠点とする Kangding Ray の新譜。
これまでのアルバムはすべて Raster-Noton からだったが、今回はベルリンの Stroboscopic Artefacts からのリリースとなった。初期の音響/ノイズ系の作品と比べると “OR” 以後のテクノ寄りでビート志向の作品は、やはり Raster-Noton 本来のカラーから少し異彩に映っていたところはある。12"/EP をいくつか出していた Stroboscopic Artefacts が、より方向性の近いレーベルだったということなのだろう。
このアルバムもサウンドとしては前作 “Cory Arcane” の延長上にあり、レーベルを変えた局面で作風が変化したという感じはない。“Solens Arc” “Cory Arcane” と続いてきたインダストリアル・テクノがそのまま推し進められている。コンセプト提示を重視するスタンスも相変わらずで、プレスノートではタイトルの語句 “Hyper” “Opal” “Mantis” を、それぞれ「官能」「情動」「誘惑」に結びつけて簡潔に説明している。
エレクトロニック・ミュージックというものはその無機的な見掛けによらず――というか無機的なところにこそ、身体性や感情といったものにシンプルに強く影響を及ぼす力が備わっていると思うのだが、Kangding Ray の作品にはそうした面がよく体現されている。4/4で進む重く硬質なビートと、どこか情緒性のある環境音の並走。後者は叙景的というか直接描写的ではあるかもしれないが、あくまでも前者との対比で強調されている。こう言ってよければ、対比されるこれらの要素は、聴き手に呼び起こされる同じ反応効果を二極に分解して抽出したといったもののように思えなくもない。
Kangding Ray
Information
Birth name | David Letellier |
Born | 1978 |
Origin | France |
Base | Berlin, Germany |
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