音楽のつくり方を大別したときに、音を組み立ててつくっていく方法と、既にある音を加工してつくっていく方法という二種類があるとして、ダブは後者の側に属している。
サンプリングやブレイクビーツもやはり新規の音より既存の音へ依存しているけれど、流用した素材を組み立てていくという点では前者の面も持っている。……いや、もちろんダブ・ミュージックにだって構築的な部分がないわけではないにしても、音の加工や編集・変容といった側面へ殊更に執着するのは間違いなくダブの特性だ。
諸々のパラメータの調整。音を増幅したり歪曲したりすること。そしてこれらの行為は、均整を目指すというよりもその逆、平静的な状態からの離脱を狙う。ただし完全な混沌に行き着くことはない。
音楽において音のバランスというのが繊細に成り立ってるものなのだとすれば、ダブテクノには、そのバランスが崩壊する限界を見極めてギリギリの「際」にとどまる剣呑な遊戯のようなところがある。ダブテクノを聴いていつも想起するのは、レタッチソフトでトーンカーブやコントラストを弄るときの感覚だ。彩度や明度を思いっきり振って鮮烈さを現出させることに似ている。言葉で表すなら、極端だとか、誇張とか、そういった単語。鋭敏に強調されたピークと、空間を圧するエネルギー。
ダブテクノは総体として、知覚の強度を調整し再配置しているような音楽とも言える。
Porter Ricks の "Anguilla Electrica" には、始原の時代にある前作品との大きなタイムギャップを経て、方法論を不変としたまま音響面での進化が感じ取れる。それはダブテクノに端を発した潮流のさまざまなサウンドからのフィードバック、そしてこれまで Thomas Köner が続けてきたアンビエントの試みからの影響なのかもしれないのだが、自分としては、音の際へと更に近付けられたかのような感覚を受けた。
Porter Ricks
Information | |
Origin | Germany |
Years active | 1995 - |
Current members | Andy Mellwig |
Thomas Köner | |
Links | |
Label | Tresor https://shop.tresorberlin.com/index.php/tresor295.html |