思うに擬音語というのは外国語のなかで特にニュアンスを掴みづらい。‘vroom’ とか ‘meow’ といったものであれば、目にしたこともあって日本語との対応や感覚的な理解もできるけれど、知らない語だとまったく想像もつかなかったりする。
Huerco S.の6年振りとなるアルバムのタイトル “Plonk” も擬音語らしくて、辞書だと「重たげに座る、置く」「楽器を下手に弾く」という意味が書かれているけれど、直感的に理解しがたい。
ただし、擬音語というものが「音」を表象するよう割り当てられた「語」であるということを考えると、アルバムのタイトルとしては示唆的なところがある。
収録されている10曲は、“Plonk I” から “Plonk X” までどれも ‘plonk’ という語に通し番号を付けた無味乾燥なタイトルとなっている。概念的な意味を付与することなくただ音を音として表したい──という理由なのだろうか。全曲をひとつの擬音語で示しているということは、10曲に分かれてはいるけれど、アルバム全体としてひとつの音である……あるいは、概念的な語彙で表せない ‘plonk’ というひとつの音のさまざまな具象的側面がこの10曲なのだ、ということなのかもしれない。
アルバム “Plonk” には、たしかにはっきりしたサウンドスケープがある。
全体として、繊細な構成でビートとアンビエントの並立を追求したエレクトロニカ。駆けめぐるパーカッシヴなサウンドでビートが組み上げられる一方で、それ自体の持つ質感で音響が形成される。ミニマルなループ・サウンドではなくて、さざ波のごとく寄せて返すような様態での反復性。
“Plonk I” で雑多な音を散らばらせたような幕開けで始まると、続く数曲は疾走感をもって進み、"Plonk VI" で少しスローダウン、9曲目では Sir EU によるラップを伴って、最後は11分以上に及ぶ揺らめくグルーヴのアンビエント。
異なるアプローチではあっても、どれも軽やかで清涼、感覚に細密な刺激を与える情景で、各曲それを少しずつ違う視点から眺めるような体験がある。
Huerco S.
Information | |
Birth name | Brian Leeds |
Origin | Kansas, US |
Years active | 2011 - |
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