5曲入りのEP。10分を超えるような長い曲はなく、ダイナミズムは曲の展開というよりも音/ビートの実験的な構成に秘められている。
決して流麗には進まず、逆鉤のごとく引っかかるように絡みつくリズム。それでいてそこには身を委ねられる前進的な向性がある。
M-5 はもっとも長い楽曲で、パーカッションの重層と空間を埋め尽くすドローンによって、惑いのない奔流が9分に渡って持続する。
曲リスト
M-1 “Oranged Out” 5:34
M-2 “Hooper Delay” 6:45
M-3 “Fifesine” 2:01
M-4 “Phono Pastoral” 4:26
M-5 “Greencrop” 9:05
この EP は Bandcamp で name your price 方式にて販売されており、その額はアメリカの銃規制運動NPO “Everytown for Gun Safety” への寄付金となる。これは 2016.6.12.にオーランドで起こった銃乱射事件を受けてのもの。(→ https://tyondai.bandcamp.com)
きわめてはっきりしたメッセージを伴うリリースであると思うのだが、日本で本作品を紹介しているテキストでは必ずしもこの事実へ言及していないものが見られる*1。アメリカの発売元レーベル Nonesuch ではリリース背景が明記されている一方、日本の発売元レーベル Beatinc では看過されているところが特に対照的*2。
販売ルートを意識したのだとしてもリリースの意図まで滅却する必要はなく、むしろここには、最近よく日本で議論となっていた「音楽に政治を持ち込むべきではない」といった主張と同一の土壌を見て取るのが妥当だろう。銃規制の是非は日本においてコントロバーシャルなトピックであるとは言えず、にもかかわらず/であるからこそ、「政治性の忌避」それ自体がここに表れていると確認できる。
Tyondai Braxton
Information
Origin | : New York City, US |
Born | : 1978 |
Links
Official | : http://www.tyondaibraxton.com |
: https://twitter.com/Tyondai | |
Label | : Nonesuch Records http://www.nonesuch.com/artists/tyondai-braxton |
*1:言及している事例としては、amass(http://amass.jp/74571/)、iLoud(http://www.iloud.jp/video/tyondai_braxtonoranged_out.php)、deadfunnyrecords(http://store.deadfunnyrecords.com/2016/06/24/tyondai-braxton-announces-new-ep/)など。
*2:Bandcamp では両レーベルへの謝辞も記されており、日本側レーベルもこのスタンスを了解しているとは言えるのだろうけれども。